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Finishing / 仕上美

Chapter 3 - Section 5

English Text Coming Soon

第3章 第5節

モデルカーの完成品質を決定づける重要な要素は、精巧な造形に施された塗装の美しさです。ダイカスト製モデルも十分魅力的ですが、一度レジン製モデルの圧倒的な仕上り品質を知ってしまうと、二度とダイカスト製モデルに後戻りできなくなります。人間の欲望のなせる業でしょう。

第3章を締めくくる第5節では、少し複雑な造形のプロポーション・モデルを例に、1/43精密レジン製モデルカーならではの完成品質について考察します。

Artwork: Gemballa MIG-U1 2009
ゲンバラ MIG-U1 2009年

Description
Gemballa is a German tuning company from the town of Leonberg, near Stuttgart to provide aftermarket parts for mainly Porsche. It was founded in 1981 by Uwe Gemballa and once shut down in 2010, but soon re-founded. As Uwe was abducted and later found dead in the South Africa, CEO Andreas Schwarz and investor Steffen Korbach bought the brand rights from Gemballa to continue business as GEMBALLA. Before the accident, this Ferrari Enzo based MIG-U1, inspired by and named after the Russian MIG-25 Foxbat fighter aircraft, was developed on behalf of Middle Eastern clients and produced just 5 examples. The naturally aspirated 6.5 litre V12 engine puts out 700ps instead of stock Enzo's 660ps. Besides, use of carbon-fibre components attained 35kg weight reduction and new aeroparts are to create an additional 35kg of downforce at the front and 85kg at the rear. Thus MIG-U1 accelerates to 100km/h in 3.1 seconds and reaches more than 360km/h.

作品解説
ゲンバラはドイツのチューニング・メーカーで、主にポルシェなどの改造用部品を製造販売しています。ウーヴェ・ゲンバラによって1981年にシュツットガルト近郊のレオンブルグに設立されました。2010年旅行中の南アフリカでウーヴェが誘拐され、会社は破産申告しましたがすぐ復活しています。後に彼は遺体で発見され、CEOのアンドレアス・シュヴァルツと投資家のシュテファン・コルバッハが旧・ゲンバラのブランド権などを買い取り、新生ゲンバラとして再出発しました。フェラーリ・エンツォにチューニングを施したゲンバラMIG-U1は、事件が起きる前の2009年に発表されました。開発は中東の顧客からの依頼で始まり、わずか5台が生産されています。MIGというのは、1970年代旧・ソ連の戦闘機ミグ25・フォックスバット(アメリカがF15を開発する端緒となった)に触発され、因んだ名称です。自然吸気の6.5リッターV12エンジンは660psから700psまで強化され、カーボン・ファイバーを効果的に使用して車体を35kg軽量化し、さらにエアロパーツの改良でダウンフォースを前35kg・後85kg増加させています。それらの相乗効果で、MIG-U1は0-100km/h加速3.1秒、最高時速360km以上を誇ります。このモデルカーは香港デイヴィス&ジョヴァンニの作品です。世界モデルカー博物館には、他のゲンバラ車種も展示しています。

Superb Modelling and Painting / 極上の造形と塗装美

Alfa Romeo Italdesign Scighera 1997 / アルファ・ロメオ・イタルデザイン・シゲーラ 1997年

Scighera is a concept car named after "mist" in Milanese dialect and produced by Italdesign of Giorgetto Giugiaro in 1997 with a mid mounted Alfa Romeo's 3 litre twin turbo V6  engine and full time 4WD system.

Fabrizio, the son of Giorgetto, styled the car with a F1-like front nose preceding Enzo Ferrari (2002) by 5 years. Its semi gullwing door system was derived from Nazca M12 (1991) that was the debut car of Fabrizio's design career.

Scighera looks rather simple as a body shape but has complicated equipment such as the front spoiler on the front grill, movable (shut and open) side air intakes and the spoiler-looking rear end.

The 1/43 Scighera created by Tecnomodel in Italy is quite well made to realize such details in high precision. Its fully hand painting work is also excellent in colour, gloss and total quality.

シゲーラとはミラノの方言で“ミスト(霧、霞)”を意味します。ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが1997年に発表したコンセプトカーで、アルファ・ロメオ製の3リッターV6ツイン・ターボ・エンジン(ミッドシップ)とフルタイム4WDシステムを搭載しています。

デザイナーはジョルジェットの息子ファブリツィオです。F1風のフロント・ノーズを、2002年のエンツォ・フェラーリより5年も早く採用しています。ドアはファブリツィオのデビュー作・1991年ナスカM12と同じく、ガラス部が上方、ボディ部が水平前方に開くセミ・ガルウィング方式です。

全体的なフォルムに革新性はありませんが、フロント・グリルに設けたスポイラー、フロント・フェンダーから伸びた縦型ヘッドライト、開閉式のエア・インテイク、スポイラー風のリア・エンドなど、随所にファブリツィオの創造性が表れています。

エア・インテイクを開いた状態のイタリア・テクノモデル製1/43シゲーラは、ボディ全体はもちろん複雑な造形部でも、ムラなく均一で光沢のある美しい塗装が施され、実車の魅力を十二分に再現しています。

Alfa Romeo Diva Concept Sbarro 2006 / アルファロメオディーヴァコンセプトスバッロ 2006年

Diva Concept presented at 2006 Geneva Motor show was designed and developed to celebrate 10th anniversary of ESPERA, Franco Sbarro's design school, through a collaboration between Centro Stile Alfa Romeo and Fiat Group's research center Elasis, and built by Carrozzeria GT.

Its two seater light weight midship styling was strongly inspired by legendary Alfa Romeo Tipo 33/2 Stradale and power plant 3.2 litre V6 engine was derived from Alfa Romeo 147 GTA on a highly modified Alfa Romeo 159 chassis.

The car equips butterfly doors as the same as Tipo 33/2 but the most outstanding design feature is F1-like high nose front incorporating spoiler with Alfa Romeo's traditional shape grille. Such complicated details are precisely formed into 1/43 scale and beautifully painted with superb finish as a model car. 

スイスのカスタムカー・メーカー・スバッロの創始者フランコ・スバッロは、主宰するデザイン・スクール・エスペラの10周年を記念し、2006年ジュネーヴ・モーターショーでディーヴァを発表します。アルファ・ロメオ・スタイル・センターやフィアット・グループの研究機関エラシスと共に開発したコンセプトカーで、製作はカロッツェリアGTが担当しました。

この2座ライト・ウェイト・スポーツ・カーのスタイリングは、伝説の名車アルファ・ロメオ・ティーポ33/2ストラダーレに着想を得ており、フロント・エンジン車のアルファ・ロメオ159のシャーシを大改造し、アルファ・ロメオ147GTAの3.2リッターV6エンジンをミッドに搭載しています。

ティーポ33/2と同じ形式のバタフライ・ドアを採用していますが、最大の特徴はF1のハイ・ノーズに見立てたフロント形状で、先端にアルファ・ロメオ伝統の楯(たて)形グリルを設け、左右にスポイラーを渡した立体感の強いデザインです。このように複雑な造形でも、1/43モデルカーは見事に縮小再現し、細かい部分へも均等で美しい塗装が施され、実車の魅力を掌上で十分堪能できる完成度に仕上げられています。

SSC Tuatara 2012 / シェルビー・スーパー・カーズ・トゥアタラ 2012年

SSC North America is a supercar manufacturer found by Jerod Shelby in 1999 in Washington, USA that is known by Ultimate Aero the world's fastest production car of 2007-2010.

Tuatara is SSC's second marque and designed by Jason Castriota who was a former chief designer of Pininfarina. Body styling of Tuatara belongs to bullet shape similar to his previous works such as Ferrari P4/5 and Maserati Birdcage 75th.

The mid mounted 6.9 litre V8 twin turbo engine delivers 1,369ps on the curb weight of 1,247kg achieving a power-to-weight ratio of 1,097ps per tonne 2 year ahead of Koenigsegg One:1.

1/43 Tuatara is produced only by Frontiart in top level superb quality of overall form, cabin shape, aero parts and beautiful painting.

ジェロルド・シェルビーが1999年にアメリカ・ワシントン州に設立したスーパーカー・メーカーがSSC(シェルビー・スーパー・カーズ)ノース・アメリカで、2007~2010年の世界最速記録車アルティメット・エアロで知られています。

エアロに続くSSC第二弾のトゥアタラは、元ピニンファリーナのチーフ・デザイナーであるジェイソン・カストリオタの手になるデザインです。そのため、エアロとは大きく印象が異なり、彼のフェラーリP4/5やマセラティ・バードケージに類似した弾丸形ボディ・スタイリングが採用されています。

ミッド搭載した6.9リッターV8ツイン・ターボ・エンジンは1369psを発揮し、車重1247kgに対し1097ps/トンという驚異的なパワー・ウェイト・レシオ(出力重量比)を、2014年のケーニグゼグOne:1より2年も早く達成しています。

トゥアタラの1/43モデルカーはフロンティアートが作品化しており、全体形状、ドーム形キャビン、細かい空力パーツ、そして美しい塗装と、最高クラスの品質に仕上がっています。

Topics / 新着情報

2017.02.06

第7章「博物館」・全4節を新規掲載

遂に全7章(日本語コンテンツのみ)の執筆を完了。英日対訳の日本語部分だけで約1年半かかってしまった。意図的に先延ばした箇所があるものの、何とか最後までたどり着いた。拍手!拍手!

2017.01.15

「車種リスト」ページを新規掲載

本編ページに掲載したモデルカー作品を検索するための、アルファベット順車種リストページを作成

2017.01.09

第6章・第5節「製品化要望」を新規掲載(第6章完了)

第4節の掲載から3箇月以上間隔が開いてしまったが、モデルカーを過去・現在・未来の時間軸を通して考察することができた。主要な日本語コンテンツとしては、第7章の「博物館」を残すのみ。

Headmaster / 学院長

1965(昭和40)年生まれ射手座A型のスーパーカーブーム直撃世代。小学高学年でガンディーニ・デザインに魅了される。
時を経て1990年、ロンドン駐在時に英国製の1/43精密モデルカーに出会い収集を始める。1998年の帰国後は、国内の専門ショップに収集拠点を移し、現在に至る。
スーパーカーを主軸とするロードカー・2ドアクーペに車種を限定することで、未組立キットを含め約5000台を収集。
モデルカーの認知拡大、コレクターへの支援、業界の充実発展を願い、主力3700台を『世界モデルカー博物館』に展示。
同時に、展示作品の愉しみ方を解説する本サイト『モデルカー学』を開講。現在も「コレクター道」を実践・追究している。

―2015年5月現在―

2017年6月末に英国ロンドンへ再赴任し、現在ロンドンから欧州の様々な情報をブログとFacebookで配信中。

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