仮組みが完了しましたら塗装へ向けての作業を開始します。プロの作品で最も目を引くのが美しい塗装ではないでしょうか?きれいな発色と研ぎ澄まされたようなツヤは、キット製作者の憧れでもあります。
もちろんプロは塗装にはエアブラシを使い、塗料も実車用のものを使ったりしていますが、きちんとした工程さえ踏めば缶スプレーでも充分満足いく仕上がりを得る事ができます。
この塗装工程で最も重要なのは下地作りです。ここの出来の良し悪しが仕上がりを左右するといっても過言ではありません。ということで、まずは表面を#400~#600くらいでペーパーがけします。
もしここで新たにキズや凹みなどを発見した場合はパテで修正します。シャーシや内装パーツなども同じようにします。
全体がペーパー掛けできましたなら再度洗浄します。
ペーパー掛けしたときの削りカスはもちろんですが、結構手の脂なども付着してしまっていて、このままでは塗装したときにハジキ(脂分のせいで塗料がはじいてしまい、えくぼみたいに凸凹してしまう現象)が発生してしまいます。
下地から上塗りまで塗装前には必ずしっかり洗浄しましょう。
洗浄できましたら水分をふき取り乾燥させます。ドライヤーを使用してもいいですが、あまり温度を上げすぎますと変形してしまいますので注意が必要です。
グリルやランプなどの凹んだ部位やスジ彫りの中は乾燥しにくいのでここはあせらず完全乾燥するまで放置しましょう。
下地の準備が出来たら塗装にかかります。
要らなくなった小ビンなどに両面テープでボディを貼り付けます。
塗装時の持ち手にするとともに、乾燥時の固定にも使えます。
その他のパーツも同様に固定します。
目玉クリップなどを活用すると便利です。
さて、いよいよここから塗装工程に移りますが、ここで塗装作業に関する基礎的な知識を習得しておきましょう。
いずれも塗装に対して非常に大きな影響を与えます。
気温は高くなるにつれて塗装の乾燥が速まるため、良いような気がしますがその反面ツヤが出にくくなります。
これはなぜかといいますと、塗装面に吹き付けられた塗料は内部のシンナーを揮発させながらゆっくりとなじみ、表面が平滑になっていきます。気温が高いとシンナーの揮発が早いため、充分に平滑になる前に塗料が固まり始めてしまい、ザラザラしてツヤが出にくくなってしまうのです。
逆に気温が低いとゆっくりとシンナーが揮発しますのでツヤが出やすくなりますが乾燥には時間がかかります。
次に湿度ですが、湿度が高いといわゆるカブリといったトラブルが発生しやすくなります。
カブリとは、冷えたグラスの表面に水滴が付いて曇る現象と同じことが塗装面で発生することです。
液体は気体に変化するとき気化熱といって周りの熱を奪う事は皆様ご存知だと思いますが、このとき一緒に冷やされた周囲の空気中に溶け込んでいた水分が液体となって付着してしまうのです。これが発生してしまいますと塗装面が白くくもり、ツヤも無くなってしまいます。
気温と湿度の影響を最小限にする為には、比較的乾燥して熱くも寒くも無い日を選んで塗装するのがベストですが、真夏や真冬はそうもいきませんので、最低限雨天の前後は塗装を避けましょう。
気温については上記の乾燥速度の違いを理解したうえで塗装します。
代表的な塗装トラブルで、モデラーにとっては永遠のテーマでしょう。
缶スプレーを使用してベランダなどの屋外で塗装する場合は避けようがありませんので、付いてしまった後に修正することを前提として考えますが、運よくあなたがどこか室内で塗装する環境をお持ちでしたらなるべくこのリスクを避けたいところです。
ホコリやゴミの付着を避ける為には、なるべくクリーンルームに近い状態の場所で塗装・乾燥させればいいわけですが、なかなか難しいことです。
では、ホコリやゴミはいったい何処からやってくるのかといいますと、衣服・カーペット・布団・クッション・カーテンなどの布関係のものが大半で、その他に髪の毛などにも大量に付着しています。また、エアコンやファンヒーターなどを稼動させますとこれらが舞い上がります。
ということで、なるべくこのようなリスクを避ける為には部屋の中に布団やクッションを置かない、カーテンの開け閉めをしない、塗装時の服装はホコリの出にくい化学繊維のものにする等のことに留意します。
あと、意外に大きいのは塗装前に入浴もしくはシャワーを浴びる、ということです。これで体に付着したホコリやゴミの大半を洗い流すことが出来ます。
塗料の隠ぺい性とはいわゆる塗料の透け具合のことです。
明るく薄い色ほど透けやすく、隠ぺい性が低くなります。この為、鮮やかな発色を得る為には下地の色を白にしておくことが最も無難でしょう。
その他には赤を塗る前に下地をピンクにしたりすることもありますが、これは特殊な例としてよいと思います。
現在では下塗り専用の白塗料も発売されておりますのでこれを使用してもいいでしょう。
前述しましたプラサフを塗装します。使用するのはソフト99のプラサフです。当然ですが塗装前には缶をよく振り中身を充分に攪拌しておきます。
つや消しグレーのプラサフを塗装しますとレジンの地肌状態では判りにくかったキズや凸凹がはっきりと鮮明になります。これを利用しまして最初の塗装は下地の最終確認の為の塗装と考えましょう。ここで確認できたキズや凸凹を再度修正し、ボディ全体を #600~#1000のペーパーで仕上ます。
ここら辺は自分の納得がいくまで仕上ましょう。この段階での手間が後々大きく響いてきます。修正が完了しましたなら最終のプラサフ塗装を行い、#1000くらいのペーパーで仕上ます。全体がツルツルになったら下地の出来上がりです。
ちなみにこのプラサフ塗料はシンナーの含有量が非常に多く、少々ドップリ吹き付けても乾燥するとかなり収縮しますので、ちょっと気持ち多めに吹き付けてペーパーで綺麗に仕上るのが良いでしょう。
下地が綺麗に出来上がりましたなら一旦洗浄し、乾燥後に下塗りにかかります。ここでは白を吹きます。
元々缶スプレーは比較的大きなものを塗装するのに適しているため、43模型の塗装に対しては塗料の噴射量が多すぎます。ここを充分に理解してムラ無く綺麗に吹き付けましょう。
コツとしましては充分に攪拌する・缶が冷えすぎているとき(特に冬場など)はぬるま湯などで少し缶を暖める、ノズルとモデルは30cm以上離し、葺きつけは薄く数回に分けて少しずつ塗り重ねる、といったことが基本的なことになります。
とにかくあせらず、少しずつ塗り重ねることが最も重要で、1回目の吹き付けでは目安として全体的にホコリがかぶった程度にします。
同様に2~3回吹き重ね、充分に色が乗ったところで最後につやを出すため表面がテロっとする程度に吹き付けます。
プラサフ塗装が完了したボディ。
缶スプレーの吹きつけは一気に行わず、薄く最低でも2~3回に分けて行います。
塗装と塗装の間は自然乾燥なら1時間はおきましょう。
白の下塗りにかかります。
缶スプレー塗装する場合の吹きつけの目安ですが、1回の塗装で写真の状態くらいを限度にします。
これを数回繰り返して徐々に色を付けていきます。
下塗りが完了したところ。
今回は約1時間の間隔で4回吹き付けました。
この状態で完全に乾燥させます。
缶スプレーはエアブラシとは比較にならないほど塗料の噴射量が多く、ちょっと油断すると塗料がドバっと乗ってしまいます。
こうなると何が発生するかといいますと、液体である塗料の性質として表面張力が働き、エッジ部分には塗料が乗らず、水平面が盛り上がって塗料が厚く乗ってしまいます。
また逆にスジ彫りの周囲には塗料が溜まり、ミミズ腫れみたいになってしまいます。こうなると何度吹き付けてもなかなかエッジ部分に色が付かなくなってしまい、水平面のみどんどん塗膜が厚くなってしまったり、垂直面で塗料が垂れてしまったりします。
また、厚く吹き付けられた塗料は表面と内部でシンナーの蒸発スピードが異なる為に表面だけが先に乾燥してしまい、内部のシンナーが閉じ込められてなかなか乾燥できなくなってしまいます。
ラッカー塗装後に塗装面がやわらかい、という不具合はこのせいです。さらにラッカー塗料はシンナーが揮発することによって収縮しますので、厚く吹き付けてしまうとヒビ割れが発生してしまうこともあります。
これを回避する為にはとにかくあせらず、塗っては乾燥、を繰り返しましょう。
上記のようなことに注意しながら塗装をしても、どうしても完璧には出来ないものです。
ここでは良くありがちな塗装のトラブルについてのリカバリー方法をいくつかご紹介します。
乾燥後に#1500~#2000のペーパーをあてて削り落とします。出っ張った部分だけを削るように注意します。
なお、ホコリに関しては塗装直後ならピンセットでつまんで除去できますので、塗装時には手元にピンセットを置いておき、ホコリが付いたら間髪いれずに除去するといいでしょう。
ブツなどと同じように乾燥後に削り落とすことになりますが、ブツなどよりはやっかいでタレた部分のみを平滑に削り落とす事はかなり困難です。
下塗りが露出してしまったら潔く再塗装しましょう。
呼んで字の如く、塗装面がミカンの皮のようにザラザラになってしまう状態です。
スプレーとモデルの距離が遠すぎたり、スプレーのガス残量が減ってきて噴射圧が低下したときなどに発生します。
処置としましては#1500くらいで綺麗にペーパーをかけることになりますがこうすると最終のクリアー塗装を厚くしなければならず、ボッテリした仕上がりになってしまいますので、気になる場合は再塗装しましょう。
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