Chapter 3 - Section 1
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Carabo
Iguana
Navajo
第3章 第1節
2ドア・クーペの美しさは、細かい造形を云々する前に、まず全体のフォルムから醸し出されます。その際、プロポーションに最も影響を与える要素が、エンジンの搭載位置です。
ガソリン自動車、しかも大排気量のスーパーカーとなると、メカニカル・パッケージの仕上がりによって、エクステリア・デザインに込められる創意工夫がある程度制限されます。
そうは言っても、アルファロメオ・ティーポ33(ミッド・エンジン)では同じシャーシにカロッツェリア3社が全く異なるボディを架装し、華やかなコンセプト・カー6種を競作した例もあります。カラーボ、イグアナ、ナバホなどが有名です。
1/43モデルカーにおける美的感性を紐解く第1節は、基本的なプロポーションの成り立ちについて説明します。
Description
Ferrari is famous for V12 engine but in 1950s produced straight 4 engine for racing cars including F1 in accordance with downsizing engine regulations at the time. Naturally 3 digit name of marques became larger than V12's such as 500, 625, 735, 750, 857 and 860 to show the 1 cylinder capacity. The 500 Mondial was developed for sports prototype racing as a spider. "Mondial" was in tribute to success of Alberto Ascari who became the first Ferrari's F1 world champion driving cars with the same type engine. Its coupe was only produced 2 examples. The model car is the rare coupe version released from MR Collection Italy.
作品解説
V12エンジンの印象が強いフェラーリですが、1950年代はF1を含め小排気量のエンジンで競う規定が増加し、フェラーリも小型の直4エンジンをレース車両に搭載しました。4気筒であることから、1本のシリンダー容量を表す型式名は500、625、735、750、857、860などV12型より大きな数値となっています。500モンディアル・シリーズはスポーツ・プロトタイプのレーシングカーで、モンディアル(=全世界)の名は、同型エンジンでアルベルト・アスカリがフェラーリ初のF1ワールド・チャンピオンになった快挙を称えています。レース用の500モンディアルはスパイダーですが、2台だけクーペが製作されました。モデルカーはイタリア・MRコレクションのレジン製ファクトリービルトで、私が初めて購入したレジン製フェラーリ・モデルであると共に、フロント・フェラーリではお気に入りの1台です。
The Origin of Beauty / 美の起源
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前後の重量配分
フロント・エンジンは、世界最初の自動車(蒸気動力)として記録に名を残すキュニョーの砲車(1769年)から採用され、1900年代のガソリン自動車においても、さらに21世紀に入っても、ロードカーとしては主流のエンジン・レイアウトです。ただし、駆動輪は前・後・全輪などに分かれます。
典型的なプロポーションは、ロングノーズ・ショートデッキと呼ばれるスタイルです。大排気量エンジンの搭載を誇示しながら、シャープなリア・デザインでスポーティー感を演出します。代表格にジャガーEタイプ(1961~75年)があります。
フェラーリ612スカリエッティは、2004年に発表された4人乗り2ドア・クーペです。フェラーリは2シーター中心ですが、1960年の250GTEから主座席の後ろに補助席を設けた「2+2」シリーズが登場します。612もその系列ですが、実用性を重視して後部座席はゆったりと設計されています。
エンジン・レイアウトはフロント・ミッドシップという方式で、ホイールベース内、つまり前後の車軸の間にエンジンを搭載して重心位置を車体中央に寄せ、運動性能の向上を図っています。外観上でもフロント・オーバーハングが短めに抑えられ、バランスの良いフォルムが実現されています。
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このモデルカーはフル開閉ではなく、一部の可動部分を開いたまま固定したセミ・オープン固定モデルです。そのため、エンジンが前輪車軸よりキャビン側に搭載されている状態や、フェラーリにしては広めの後部座席などが視認できます。
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リア・エンジン車の歴史も古く、ゴットリープ・ダイムラーやカール・ベンツの手になる最初期(1885~1900年頃)のガソリン車で、すでに採用されています。駆動させる後輪の上にエンジンを搭載できるため、技術が未発達だった自動車黎明期においては合理的なレイアウトでした。
フロント・レイアウトが大型エンジンでも搭載できるのに対し、リア・レイアウトは小型エンジンにしか向いていません。しかし、コンパクトなエンジン搭載に成功した車輌には、ビートル(タイプ1)、フィアット500(2代目)、ミニ(初代)、アルピーヌA110など、歴史的名車が揃っています。
名車の中にあって、リア・エンジン車の頂点に君臨するブランドがポルシェです。初の市販車である356(1948年)からリア・エンジンを採用し、911へと継承された伝統のエンジニアリングは、21世紀に突入しても進化を続けています。
ポルシェ959は、1981年に開発した4WD技術を導入し、FIAグループBのホモロゲーション仕様として1986~89年に生産されたスーパースポーツです。伝統のフラット6エンジンにツイン・ターボを搭載し、他の911同様に後部座席も設けられています。そのため特別仕様車であることを感じさせないくらい、全体のフォルムは911そのものです。
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このモデルカーもセミ・オープン固定モデルです。RR(リア・エンジン後輪駆動)車らしく、後輪車軸周りにエンジンがコンパクト収容されています。高性能4WDでありながら4人乗りも実現した、ポルシェならではの優れたパッケージングです。
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ミッド・エンジン車の歴史は、モータースポーツから始まりました。フェルディナント・ポルシェがアウトユニオンの依頼で開発したレース車輌、Pヴァーゲン(1934年)が初のミッド・エンジン車と言われています。
その後もミッドシップ・レースカーはサーキットで活躍しますが、主流として定着したのは1960年代のF1においてで、その頃からロードカーにも採用され始めました。
ミッドシップはエンジンを主座席と後輪車軸の間に搭載するため、キャビン(乗員室)を前輪車軸の直後まで押し出したようなフォルムを形成します。
飛行機に例えるなら、フロント・エンジン車が、キャビンの前にエンジンを搭載して機体を引っ張るプロペラ戦闘機で、ミッド・エンジン車は、キャビンの後に搭載したエンジンから後方噴射し、機体を推進させるジェット戦闘機のレイアウトです。
その特性を最も活かしたスタイリングが、フロント・ノーズからウィンドウ・シールド上端までを一直線で結んだウェッジ・シェイプです。ランボルギーニ・カウンタックの登場で、ミッドシップ車はスーパーカーの代名詞のような存在となりました。
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ランボルギーニ・カウンタックは、初登場(1971年)から生産終了(1990年)まで、統一したフォルムが貫かれています。それは世代を超え、ディアブロ、ムルシエラーゴ、アヴェンタドールなど代々のフラッグシップ車に継承され、ミッドシップ・ロードカーならではのスタイリングとして定着しました。
華やかに見える上方跳ね上げ式のシザー・ドアですが、決してハッタリではなく、ウェッジ・シェイプ車に乗り降りするためのエンジニアリング上の必然性から誕生しています。マルチェロ・ガンディーニの偉大なる発明の一つです。
ミッドシップ・2シーターなので、キャビン内にはゆとりが無く、荷物室は前後車軸の外側にわずかだけ設けられています。それは同時に、走行に必要な装備がホイールベース内に集約されたパッケージングであることを示しています。特にカウンタックで際立っており、パオロ・スタンツァーニの情熱と創意工夫で実現しました。
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世界で初めての市販ミッド・エンジン・ロードカーは、フランスのルネ・ボネ・ジェット(1962年)です。その翌年には、3台のイタリア車(250LMの純粋なロードカーは1965年)が発表されています。
4台ともプロポーションに大きな違いは無く、フォルムもフロント・エンジン車よりキャビンが少し前に寄ったかなという程度です。カウンタックのようなミッドシップならではの個性はありませんが、ミッドシップ・スーパーカー時代の到来を予感させる味わい深いデザインです。
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ここに紹介したモデルカーのマトラ・ジェットは、ルネ・ボネ・ジェットそのものではありませんが、唯一発売されているキットが未組立なので、代役を立てました。両者はバンパー周りのデザインが異なるだけで同じフォルムをしています。
ルノーの直4エンジンをミッドに搭載したジェットは、1962年にルネ・ボネが開発しましたが、経営難からマトラが買収すると、自社初の市販車として65~67年まで生産されました。その後マトラはモータースポーツに参戦し、F1やル・マン24時間耐久レースで勝利を挙げています。
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