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2017.08.20

ロンドン散策 その8

ロンドンはどの方角にレンズを向けても、ポコポコと天に伸びる建設工事用クレーンの多さが目立つ。

 テンプル再び

7月1日(2日付けブログ)にテンプルを訪れた際、王立裁判所(写真右)は眺められても、テンプル教会には行けなかった。そこで8月12日の夕方に行ったものの既に閉まっていたため、教会だから日曜礼拝を一般公開しているだろうと13日(日)の早朝に再び訪ねた。しかし、敷地への扉は固く閉ざされたままだった。敷地は広いのに大通りから入る門は狭く、その建物は私の大好きな“道路出っ張り型”(写真下)である。

テンプル教会への入り口は地味で、気付かず通り過ごしてしまいがちだ。

王立裁判所の前には、道路の真ん中に石柱があり、グリフォン像が鎮座する。

期せずして、英国御用達の紅茶店トワイニングの歴史ある店舗に出くわした。

 ロンドン科学博物館

8月11日にはロンドン科学博物館(The Science Museum, London)を訪問した。表向きは入館無料だが、実質は寄付として然るべき金額を支払うことになる。私のような居住者は、何か税制上の処理があるらしく、色々と聞かれた。

日本でいうなら、上野にある国立科学博物館のような位置づけ。しかし、隣に自然史博物館があるため、ロンドン科学博物館は純粋に人類の手によって生み出された道具や工業製品だけに限定されている。上野の方は自然史も含まれているため、上階にあがらないと工業製品は出てこないが、こちらは入館するや否や、巨大な発動機が出迎えてくれる。

テーマが人工物なので、可能な限り実物が展示されており、小さい道具からロケットまであり、かなり見ごたえがる。ただ、さすがに超大型の船舶やテムズ・バリア(写真3段下)などは模型展示だった。下の写真左端はエニグマである。ナチスドイツが使用していた暗号作成機で、読解にイギリスの天才数学者アラン・チューリングが挑んだ。その成果が現代のコンピューターの起源だとも言われている。ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画『イミテーション・ゲーム』を観ていたので、「これがエニグマか」と感慨深いものがあった。右端の写真は、ロタリー(宝くじ)の当選番号抽選機。これも科学ってことなのだ。

やはり、工業化を進展させるには、動力をどうやって獲得するかがテーマだ。現代の便利な時代(たぶん未来はもっと便利になる)は、先人の知恵と工夫と技術開発が積み重なってこそ存在しているのだと実感した。2段目真ん中の写真は、動力でシャフトを回転させ、そのシャフトからベルトで動力を各種工作機に分割する方式の模型だ。実際に動きを確認できる。ここまで道具の数は多くないが、創造広場アクトランドの「創造館」でも実物を用いて再現している。是非ご覧になっていただきたい。

イギリスは何と言っても蒸気機関の発明者ジェームズ・ワットの国。ワットの蒸気機関や仕事場の再現など展示は充実している。また、ウィリアム・ヘドリー(William Hedley)らが開発した世界初の蒸気機関車プッフィング・ビリー号(Puffing Billy)の実物(下の写真)も展示されている。決してイギリス産の車両だけではなく、アメリカのT型フォードやドイツからはビートル、イセッタ、メッサーシュミッなど、そして日本からは何故か日野コンテッサ(写真割愛)が展示されていた。

私は絵画も彫刻(特にギリシャ・ローマ)も好きだけれど、こういった工業製品の展示はもっと好きだ。前者を“芸術”と呼ぶなら、それは“感性”の賜物で、後者を“技術”と呼ぶならば、それは“知恵”の結集であろう。もちろんそこには、芸術性が必要不可欠ではあるけれど。

入館した途端、子供の頃の気持ちに還ることのできる博物館だ。皆さんも是非訪問されてはいかがだろうか。

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Headmaster / 学院長

1965(昭和40)年生まれ射手座A型のスーパーカーブーム直撃世代。小学高学年でガンディーニ・デザインに魅了される。
時を経て1990年、ロンドン駐在時に英国製の1/43精密モデルカーに出会い収集を始める。1998年の帰国後は、国内の専門ショップに収集拠点を移し、現在に至る。
スーパーカーを主軸とするロードカー・2ドアクーペに車種を限定することで、未組立キットを含め約5000台を収集。
モデルカーの認知拡大、コレクターへの支援、業界の充実発展を願い、主力3700台を『世界モデルカー博物館』に展示。
同時に、展示作品の愉しみ方を解説する本サイト『モデルカー学』を開講。現在も「コレクター道」を実践・追究している。

―2015年5月現在―

2017年6月末に英国ロンドンへ再赴任し、現在ロンドンから欧州の様々な情報をブログとFacebookで配信中。

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