Practice/実践方法 ≫ Creators/メーカー | Production/製造 | ▼ | Purchasing/購入 | Appreciation/鑑賞
⑤ 塗装編〔本塗装〕 How to Build 1/43 Kit
組立方法 ≫ 準備編〔工具〕 準備編〔キット〕 組立編〔仮組み〕 塗装編〔下塗り〕 塗装編〔本塗装〕 組立編〔仕上げ〕
第5章 第3節 第5項
■ 本塗装
この塗装でようやくボディカラーになるわけですが、要領としては下塗りと同様の方法で塗装します。ただ、隠ぺい力の低い明るい色の場合はムラにならないように気を付けます。
また、夜間に塗装作業を行う場合も多いと思いますが、このときの照明にはなるべく昼光色の蛍光灯を使用しましょう。
温暖色の蛍光灯やダウンライトなどの白熱球では正しい色が判りにくく、思った色に塗装できなくなります。
塗装後は充分に乾燥させ、乾燥後に下塗りと同様塗装面をチェックして必要であれば修正を行っておきます。
上塗り塗装を上手くムラ無く行うために、塗装が乗りにくい部分をあらかじめ塗装しておく方法があります。
要らなくなった小ビンなどに缶スプレーの塗料を取り出し、塗装が乗りにくいスジ彫りの中や凹んだ部分などを筆塗りで塗っておきます。
この時、筆返しをすると下塗りの白が溶けてきますので、手早くサッと塗るようにします。塗装にエアブラシを使用する場合はこのような処置は必要ありません。
本塗装が完了したところ。
塗り方は下塗りと同じように薄く2~3回塗り重ねた後、最後にツヤが出る状態にします。
上手くエッジの内部にも塗装が出来たようです。
■ デカール
カーモデル製作の山場の一つ、デカール貼りにかかります。
43キットといいましてもデカールは基本的にプラキットと同じです。ただ、デカールのメーカーによって非常に品質のバラつきが大きく、これを充分に知っておかないと失敗してしまうことがあります。
最近では国産プラキットにも採用されておりますカルトグラフなどは良質デカールの代表的なメーカーで、43キットでもタメオをはじめいくつかのメーカーでは採用しています。
反面テナリヴやスターターの古いキットのデカールは経年劣化が激しく、水につけるとバラバラになってしまうものがかなりあります。
また、SRCやSMTSのデカールは間違いなく黄ばんでしまいます。
新発売のキットをすぐに作る場合は特に気にしなくていいのですが、絶版になった古いものを作る場合はここら辺も留意しておく必要があります。
中にはメーカー不明の素性のわからないデカールが入っている場合もありますので、このような場合はまず不必要なデカール(使わないゼッケンやロゴ)をプラ板などに試し貼りし、状態をよく確認してから使用しましょう。
■ デカール貼り
では、デカールを貼っていきましょう。
要領はプラキットと同じです。デカールシートからカッターナイフやデザインナイフ、ハサミなどで必要なデカールのみ切り抜いて貼ります。
インストや資料写真を良く見て位置や向きを間違えないように、曲面にはデカール軟化剤を使いながら慎重になじませましょう。
注意点としましては、綿棒を使いながらしっかりと空気を抜いて密着させる、デカールが乾燥するまではデカールを擦らない、特にデカール軟化剤でやわらかくなったデカールを擦ってしまうと一発でアウトですので要注意です。
ボディーストライプやカラーリングなどの大判デカールは2~3枚に切り分けて貼るといいでしょう。あまり大きなデカールを一気に貼ろうとすると失敗の元です。
デカールを貼り終えましたなら充分に乾燥させます。乾燥時間はデカールによって変化しますが出来れば24時間以上は乾燥させるのが好ましいようです。
デカールが乾燥しましたら一旦ボディを水洗いします。これはこの次のクリアーがけの準備工程でもあり、デカール貼りのときに付着した余分なノリを除去する為です。
この時の注意点は、水洗い中に密着の悪かったデカールが剥がれて流れてしまうことがありますので、洗面器などの中で洗うようにしたほうが良いでしょう。こうすれば万が一剥がれてしまってもデカール専用のノリ(マークセッターなど)を使用して貼りなおすことが出来ます。
また、デカールの密着具合が悪く、気泡が抜け切っていない箇所はボディを水に漬けるとよく判りますのでこの時に再度チェックしておくと良いでしょう。
水洗いが済みましたら再度乾燥させます。
デカール軟化剤。
各模型メーカーなどから何種類か発売されていますが、種類によって効き目が異なりますので使用する前には不要なデカールでテストしましょう。
写真左のクレオスのものは入手もしやすく、効き目もマイルドでデカールを溶かしてしまう失敗のリスクも少なくお勧めです。
デザインナイフでデカールを切り出します。
余分なフィルムはカットして、なるべく文字やロゴに近いところで切り出しましょう。
もちろんデザインナイフの刃は切れ味の良いものを使用します。
デカールを水につけ、台紙からスルリと剥がれるようになったらボディに乗せ、綿棒でそっと押さえて水分と気泡を取り除きます。
位置の微調整を行ったらデカール軟化剤を塗り、また綿棒で押さえてしっかりと密着させます。
■ クリアー塗装
さて、ボディの方はいよいよクリアー塗装に入ります。
使用しますのはラッカークリアー塗料ですので前述の通りシンナー分を多く含んだ塗料です。多くの失敗はこのシンナーがデカールを侵してしまうことによって発生します。
失敗を避ける最大のポイントはとにかく焦らず、少しずつ塗り重ねること、塗るごとに乾燥を充分させることでしょう。焦って厚く塗りすぎたり、乾燥が不十分なうちに塗り重ねたりしますと間違いなく失敗します。
ここでの失敗は今までの工程がすべてパーになってしまいますのでモチベーションが一気に下がってしまいます。仕上がりに多少の不満はあってもまずは完成させることが次へのチャレンジ意欲を掻き立てる原動力となりますので、とにかく慎重にいきましょう。
ラッカークリアーも模型用のものも各メーカーから発売されておりますし、実車用のものもありますが缶スプレーであれば特に大きな違いは無いようです。実車用ならばソフト99のクリアーが透明度も高く、ツヤも出るようです。
■ 吹き付け方
注意点は今までの塗装と基本的には変わりません。
ただ、今までの塗装より更に距離を多めに取り、1~3回目くらいまではホコリがかぶった程度に塗り重ねます。
塗装間の乾燥時間は20℃以上の気温ならばできれば3時間確保しましょう。1回塗るごとにデカールの状況を確認しながら塗り重ねます。
概ね全体がコートできましたなら、最後に艶出しの為に少し多めに吹きます。表面が光り、テロっとしたらやめます。これが出来たらホコリの付かない場所で完全乾燥させます。
指で触れても大丈夫だからといって完全乾燥しているわけではありません。完全に乾燥させるためには1週間ほど放置しておくのがベストでしょう。
クリアーを塗装します。
写真は薄く3回ほど塗り重ねたところ。
まだ表面はザラザラしています。
最後に表面がテロッとツヤが出る状態にします。
この時も吹き付けすぎには充分に注意します。
■ 小物パーツの塗装
クリアーの乾燥を待っている間にその他の小物パーツを塗装します。
手順としてはボディなどと同じようにプラサフを塗装したのちに塗装しますが、ブラックで塗装する場合は下塗り不要ですので、そのままブラックを吹き付けます。
A
小物パーツを塗装します。
塗装前に各パーツはペーパーで表面を仕上げておきます。特にエッチングパーツは表面の酸化皮膜を落としておかないと塗装が上手くのりません。
その後目玉クリップ、カットした割り箸、両面テープなどを活用してパーツを固定して塗装します。
タイヤ&ホイールも組み立てましょう。
エッチングパーツの接着にはクリアボンドかウィンドゥ用接着剤を使うと良いでしょう。
ホイールが完成しました。
当時流行していたBBS製のメッシュホイールが精密に再現されています。センターのロックナットはアルミのヒキモノパーツで用意されています。
タイヤのトレッド面はバリがあったりパーティングラインがあります。ハコ車の場合完成後にはあまり見えなくなりますが、きれいにしておくとより完成度が高くなります。
仕上げには#1000くらいのペーパーを使い、水をつけながらゆっくりと削ります。この時早くゴシゴシ削ろうとすると熱によってタイヤのゴムがささくれてきてしまいます。
写真右が仕上げたもの。
違いがわかりますか?
■ 研ぎ出し
多くのプロの作品を見てみますと、沢山デカールの貼ってあるものであっても塗装表面はまるで鏡のように滑らかに、ツヤはピカピカというよりもキラキラと輝く状態に仕上られています。
これはただ上手く塗装しただけではなく、研ぎ出しと呼ばれる工程を経ている為です。
研ぎ出しとは読んで字の如く、塗装表面の段差や凸凹をサンドペーパーで綺麗にならし、コンパウンドで磨きこんである為です。
プラキット製作で既にやっておられる方もみえると思いますが、今回はこれに挑戦してみましょう。
研ぎ出しを始める大前提はまずクリアーが完全乾燥していることです。乾燥が不十分だと思うようなツヤが出ないばかりか、コンパウンドがけの際の熱で塗膜が軟化し、指で触った指紋が付いてしまったりします。
これを防ぐ為にもボディは完全に乾燥させましょう。
■ ペーパーがけ
まずは#1500のペーパーで全体を磨きます。表面の凸凹をならすことが目的ですので、特にデカールの段差をよく確認し、段差が無くなるようにします。
研ぎ出し全体を通しての注意点は、磨きすぎによる下地の露出です。この失敗をなるべく避けるには塗装の厚さに留意します。
#1500で全体をならすことができましたら次に#2000のペーパーで磨きます。これはコンパウンドがけの準備工程となりますので、#1500のペーパー目をきちんと消しておきます。特に凹んだ部分などは磨きにくい為、ついつい磨き残してしまいますが、小さく切ったペーパーを折り曲げたり、割り箸の先端にペーパーを貼り付けたものを使用して根気よく磨きます。
ペーパーがけの際にはそのままペーパーをかける「空研ぎ」と水を含ませる「水研ぎ」があります。水を含ませることによって同じ番手のペーパーでも削れる量が少なくなりますので状況に応じて使い分けると良いでしょう。
塗膜の厚さ
ボディ全体を覆っている塗装の厚さは均一ではありません。厚い順に水平面>垂直面>エッジとなります。
つまり、エッジや垂直面は塗膜が薄いので磨きすぎには充分注意が必要なのです。
場合によってはあらかじめエッジ部分のみマスキングテープを貼っておき、削らないように保護しておく方法もあります。
全体に#2000のペーパーをかけ終わったところ。
今回はほとんどデカールがありませんが、エッジ付近に溜まったクリアーや全体のうねりを無くしておきます。
■ コンパウンドがけ
コンパウンドは細かさ別に2~3種類あれば充分です。別々に購入するよりはセットになっているものを購入すると良いでしょう。専門ショップで購入できます。
あわせて柔らかい布地を用意します。コンパウンドのセットを購入すると同梱されているものもありますのでそれを使用すれば良いですが、結構布地は使いますので出来れば別に用意しておくと良いでしょう。一番良いのはネル地と呼ばれるもので、ぬいぐるみの材料等として手芸品店などで売られております。
その他に細かい部分を磨くときには綿棒が便利ですのでこれも用意しましょう。綿棒はデカール貼り等、色々な用途に使いますので200本入りのものを一つ買っておくと長持ちします。ドラッグストアーなどで購入できるごく普通のもので充分です。先がギザギザしたものは使いにくいので止めておきましょう。
さて、準備ができましたら作業にかかります。まずは少し荒めのものでペーパー目を消します。このときに下地の露出を気にしすぎて磨く力が弱いとなかなかツヤが出ませんので、しっかり磨きこみましょう。
この力加減は文章で伝えるのはムリがありますのでとにかく数をこなして経験を積むことが上達の早道です。ただし、あまり速いスピードでゴシゴシやると摩擦による熱で塗装がただれてくる時がありますので、ゆっくり、しっかり、根気よく磨きます。
そして、全体にある程度ツヤが出て、ペーパー目が消えたらここで一旦水洗いして洗浄します。これはこの次に細かいコンパウンドを使用するときに荒いコンパウンドが残っていると具合が悪い為です。スジ彫りなどの細かい部分も含め綺麗にしておきましょう。
洗浄が終わりましたら順に細かいコンパウンドを使用して磨き込みます。新しいネル地を使用してピカッと光るまで根気よく磨きます。この時も下地が露出しないようエッジ部分などは充分気をつけて作業を進めます。凹んだ部分や細かい部分は綿棒を使用して磨きます。
完了しましたら再度洗浄し残ったコンパウンドを綺麗に落とします。
研ぎ出しがほぼ完了したところ。全体がツルツルになりました。滑って落とさないように注意しましょう。
もし磨きが不十分な箇所があればコンパウンドがけをやり直します。
工程が前後しますが仮組みの時点でシャーシまたはボディに台座固定用の穴を空けておきます。小さなナットをシャーシに接着してボルトで固定しても良いですし、やりにくい場合はタッピングビスを使用しても良いでしょう。
タッピングビスを使用する場合はあまりネジ穴をきつくするとボディが割れてしまう場合がありますので、きつくなりすぎないように穴の大きさを調整します。
今回はメタルのシャシプレートをタッピングビス4本で取付け、台座固定用にレジンのボディに2箇所タッピングビスの穴を空けておきました。
■ ディティールの塗装
次に細かいディティール部を塗り分けます。ボディ内側やホイールハウスの内側はつや消しブラックで、その他の部分はインストや実車の写真などを見ながら塗り分けます。
エアブラシがあればマスキングして吹き付け塗装するときれいに仕上がりますが、筆塗りでも充分満足できる仕上げは可能です。
ボディ内側やヘッドランプ部分などのディティールを塗り分けたところ。
全体が引き締まって実車らしくなってきました。