Chapter 2 - Section 3
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第2章 第3節
1台1台の自動車は決して単独で存在しているのではなく、ブランドの歴史という時代の変遷の中で、開発の経緯という縦軸と、派生車種の発展という横軸が複雑に絡み合い、点から線、線から面、面から体へと拡がる壮大な車種体系の一部として存在しています。
そこに着目し、歴史に埋もれたミッシング・リンクを紡ぎながら作品を収集すると、単独では見えてこない実車の魅力と奥深さに気付きます。掌サイズで収集できる、1/43モデルカーによって切り拓かれた愉しみ方です。
コレクションとは単に数を誇るものではなく、前後左右の関係性の中で1作品1作品の存在意義を照らし出し、個々の魅力の相乗効果で組上げられた、圧倒的な集合体の魅力を創り上げるためのものです。地球を含む太陽系、さらに大きな銀河系、そして広がる宇宙全体に目を向けるような感じです。
「量」の中で「質」を輝かせられる作品の集積が、1/43モデルカーにおける上質なコレクションなのです。
Description
Ferrari took mid-engine layout of F1 machines in 1961 and decided to do the same for GT racing cars. In 1993, Ferrari's first midshipped GT racing car 250LM (3000cc) was revealed at the Paris Motor Show. However, the car couldn't be homologated because of far less production than the regulated 100 examples a year. Actually total production was only 32. So 250LMs entered the sports prototype class. Their engines were 3300cc except for the first prototype. In 1965, 250LM won the Le Mans as named after and Pninfarina introduced a pure road car 250LM Stradale at the Geneva Motor Show. The model car is high quality resin factory built by HECO Miniature in France.
作品解説
1961年にF1でミッドシップ・レイアウトを採用したフェラーリはGTカーレースでもフロント・エンジンの限界を感じ、自社初のミッドシップGTレーシングカー250LMを開発し、1963年のパリ・モーターショーでプロトタイプを発表しましたが規定の年間100台生産に届かず(総生産台数でも32台)、GTカーの公認が得られないためスポーツプロトタイプでエントリーしました。V12エンジンが中心だった頃のフェラーリは、ディーノ206S系以外は1シリンダー容量を車名に用いました。250LMだと250cc×12で3リッター(1号車)、しかし2号車以降は275ccの3.3リッター・エンジンでした。LMの名の通り1965年にル・マンを制覇し、同年のジュネーブ・モーターショーでピニンファリーナが純粋なロードカー“La 250 LM Berlinetta Speciale”を発表しています。モデルカーはプロトタイプ1号車で、完成度に定評のあるヘコ・ミニチュア(フランス)の作品です。
Systematic Expansion of Marques / 系統的な車種の発展
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Carrozzeria Bacchelli Villa
Carrozzeria Autosport.
1台のスーパースポーツが完成するまでには、“挑戦の軌跡”とでも呼ぶべき車輌が、開発の過程で生み出されています。ここではフェラーリF40を例にして、あまり表には出てこない“ミッシング・リンク”の存在について説明します。
F40は創始者エンツォ・フェラーリが存命中に関与した最後の車種、そして創業40周年を記念した特別な車(スペチアーレ)です。しかし、エンツォがこだわり続けたV12エンジンではなく、308以降導入されたV8エンジンを搭載しています。
308GTB(自然吸気3000ccV8)は、ミケロットの手によってFIAラリー選手権(グループ4&B)仕様車が生産され、好成績を残しました。そこで、フェラーリとミケロットは新たなシャーシを造り出し、少し前に512BBLMをデザインしたアウトスポルト(旧・バッケッリ・ヴィッラ)がレース用ボディを架装して、グループB車輌308GTMが誕生しました。512BBLMを前後に圧縮したような個性的なエクステリア・デザインで、生産台数はわずか3台です。
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Ferrari 288 GTO
Gran Turismo Omologato
(グラン・ツーリズモ・オモロガート)
308GTMの後、ポルシェ959やフォードRS200のように、フェラーリも本格的なグループB車輌を開発しました。エンジンを3000ccから2855ccに縮小して同社初のツインターボを搭載した288GTOです。GTOとはグラン・ツーリズモ・オモロガート(GTレースの公認取得車輌)の略で、GTレースカーの歴史的名車250GTO(1962~64年)に因んでいます。
公認(ホモロゲーション)用のロードカーと別に、ミケロットがチューニングを施して空力デザインを向上させたレース車輌、288GTOエボルティオーネが6台製作されました。
しかし、グループBの突然の廃止によって、288GTOエボルティオーネは戦いの場を失います。そこでエンツォは、同車を逆にロードカーへと仕立て直し、レースでも戦えるロードカーの開発を指示します。そうしてF40は誕生しました。
創業40周年のスペチアーレがV8ツインターボである謎は、ミッシング・リンクを紡いでいくことで解明されました。その後F40は、さらにチューニングされたレース仕様車達によって、ル・マンや数々のGTレースで輝かしい戦績を残しました。
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次は、単一車種内で次々と派生車種が誕生していく様子を、人気の高いフェラーリ458イタリアを例に説明します。V8シリーズは308&328、348&355、360&430と発展を重ね、2009年に458イタリア(自然吸気エンジン)が登場しました。派生車種は一通り出尽くし、2015年に改良型である488GTB(ターボエンジン)へと系譜が引き継がれました。
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458イタリアは、正式にリリースされた車種だけでもザックリこれだけ存在します。通常の車種だとこんなに増えないのですが、フェラーリやポルシェなどは単一車種グループ内でGTレース仕様車を開発し、市販しているからです。
フェラーリの歴史を遡れば、元々はF1活動の資金調達のために高級ロードカーを製造販売していました。時代を下って、高性能なロードカーによるGTレースが大きく発展したため、スーパーカー・メーカーが最初からレース仕様車の販売も当て込んで、車種ラインナップを展開している訳です。
ここではチャレンジ、GT2、GT3などが該当します。GT2には細部の異なる車種が多数ありますが、形状は同じなので1種のみを掲載しました。
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スペチアーレは2013年に発表されたマイナーチェンジ版で、動力性能の向上とフェイスリフトが行われています。また、スパイダーは屋根の無いオープン・ボディですが、私のモデルカー収集対象が2ドア・クーペであるため、屋根を閉じた状態のモデルカーで揃えています。
最初に発表されたオリジナル車種から、次々と派生車種が登場する度に「カッコ良くなった」と思うのですが、次代の完全新型車が登場して暫くすると、「オリジナル車種が一番カッコ良かった」と気持ちが先祖帰りすることがあります。
新型第1号のオリジナル車種は、固有の全体フォルムが初めてデザインされ、新しい個性として煮詰め尽くされた形状に仕上っているからでしょう。その後のマイナーチェンジは足し算的な変更が多いため、再び客観的にデザインを振り返った際に、シンプルな形状の美しさに改めて気付くのです。
そう気付けるのも、1/43モデルカーで系統別のコレクションを充実させているからに他なりません。
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自社オリジナルの自動車を開発・製造するのではなく、既存の車輌に対して性能や外観を変更して販売するチューニング・メーカーが多数存在しています。人気車種ほどチューニングを施す格好の素材であり、モデルカーの世界でもフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなどは、正式リリース車に負けない豊富さでチューンド・カーが作品化されています。
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写真のモデルカーは、愛知県のリバティー・ウォークによるLB★ワークス458です。極端なダック・テールとワイド・フェンダーが特徴的ですが、同社はメカニカルなチューニングではなく、ボディのドレスアップを中心に車体改造を行います。従って、厳密にはチューニング・メーカーには属しません。
このように、メーカーオリジナルの開発車種、市販車種、派生車種、そしてチューニング・メーカーの手になる高性能車種に至るまで、単一車種でもこれだけの深さと広さを持ち、そこからさらに前後上下左右へと展開され、立体的な体系を持つ1/43モデルカーの世界が構築されています。
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