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Relativity of Value / 価値の相対性

Chapter 4 - Section 2

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第4章 第2節

幼少期、一生懸命集めていた砂浜の石やガラス片が親にゴミ扱いされ、知らぬ間に捨てられたような残念な経験はありませんか。少年期、「漫画家になりたい」と将来の夢を語ると、親や教師に“それは職業か?”と問わんばかりに首を傾げられた不思議な経験はありませんか。

今やサブカルチャーはクールジャパンを引っ張っていく、日本を代表する文化的・経済的な一大活動に発展しています。しかし、私の少年期1970年代当時は、漫画家ですら子供が目指す真っ当な職業としては、社会的に認知されていなかったのです。数十年後、状況は大きく変わっていますよね。

これはジェネレーション・ギャップ、つまり世代間に横たわる認識や価値観の隔たりです。1人1人顔が違うように、価値観が異なって当然です。時代、地域、集団、個人等におけるこの価値の相対性こそが、多彩で個性豊かな趣味を生みだし、文化的な発展の土台となっています。

Artworks: De Tomaso Pantera GT5 1981
デ・ソマソ・パンテーラ GT5 1981年

Description
De Tomaso was founded in Modena, Italy in 1959 by the Argentine-born Alejandro de Tomaso who raced two times F1 Grand Prix as a driver. Its first road-going car (prototype) was one of the earliest midship car Vallelunga in 1963 (production in 1965) named after the circuit near Rome and designed by Carozzeria Fissore. Second was Mangusta in 1967 meaning mongoose in Italian against the rival car AC Cobra and designed by Giorgetto Giugiaro who was just moved to Ghia from Bertone. Third was Pantera in 1970 with American Ford V8 engine as well as Mangusta and designed by Tom Tjaarda at Ghia. Pantera was a co-operative project with Ford to target the American market. Wedge shaped Pantera was produced total 7298 units until 1994 for 24 years. The final version was re-styled by Marcello Gandini in 1991 and taken over De Tomaso flagship by Guara in 1993. 

作品解説
デ・トマソは、アルゼンチン出身でF1にも2度出走した元レーサーのアレハンドロ・デ・トマソによって1959年にイタリア・モデナに設立されました。初めての市販ロードカーは1963年のヴァレルンガ(量産車の発表は65年)で、最初期のミッド・エンジン車です。カロッツェリア・フィッソーレの手になり、車名はローマの北にあるサーキット名に因んでいます。2番目のマングスタ(67年)はイタリア語でマングースを表し、ライバルのACコブラに対して命名されました。ベルトーネからギアに移籍したばかりのジョルジェット・ジウジアーロのデザインです。3番目がパンテーラ(70年、イタリア語で豹の意味)で、マングスタ同様にアメリカ・フォード製V8エンジンをミッド・マウントし、シャープでシンプルなウェッジ・シェイプ・ボディは、ギアのトム・チャーダによる秀作です。フォードとの協力体制によって実現した、美しいスタイリングと格安大出力のエンジンが魅力で、アメリカ市場を中心に94年までの24年間で計7298台のパンテーラが製造販売されました。91年の最終型は、マルチェロ・ガンディーニによって細部がリデザインされています。生産終了後は、93年のグアラにデ・トマソ旗艦モデルの座を譲りました。

Solitary Struggle for Self-reliance / 自立への孤高の闘い

Free from Social Value / 社会的価値からの解放

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ジェネレーション・ギャップ、つまり世代間における価値観の相違は、個人差を超越した社会的環境によって生み出されます。分かりやすいのが、各時代における経済活動の強弱、つまり成長産業か斜陽産業か、花形産業か日陰産業かなどです。どれだけ対価が得られるかという経済的な価値が、社会的価値観に最も強い影響を与えます。

産業と趣味は、決して切り離して考えることはできません。嗜好品を扱う産業は、趣味の隆盛と深く関わっているからです。近年、クールジャパンの代表格として扱われるようになったマンガやアニメも、マイナー扱いされていた黎明期を生き抜き、趣味人口と経済規模が拡大されたがために、主流の座へと躍り出るに至りました。

つまり、社会的価値(評価)とは「数の論理」なのです。そして、その「数」を評価するのは、対象を取り巻く部外者達です。何故なら、傍で見ているだけの部外者は自分の中に評価基準を持ち得ず、定量評価に頼らざるを得ないからです。一方、趣味に没頭する当事者達に、社会的評価は眼中にありません。評価されないマイナー時代から、自分自身で選択して、その世界を支え育ててきた張本人だからです。

Head of Evaluation / 価値判断の主体

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物事の真価を見極めることは、いかなる分野でも至難の業です。そのため、つい金銭評価や他者(権威者)評価、社会的評価などの影響を受けてしまいます。素晴らしい研究成果も、ノーベル賞を受賞したから凄いと騒ぐのであって、自らが内容に価値判断を下した結果ではありません。

クールジャパンも、国内の大イベント等だけだったら、今でも「オタク」と呼ばれ、社会の表舞台には登場しなかったでしょう。典型的な海外評価先行型です。国内では、観光産業や経済効果の打算と結び付いての評価です。この傾向を、“野次馬評価”とでも呼びましょうか。

それに対し、本来の趣味の世界は“当事者評価”であると言えます。始めるきっかけを得たり造詣を深めるため、権威者や諸先輩方に学ぶことはあっても、価値基準は自分自身に中にあり、価値判断は自分自身の責任で行うからです。趣味を実践する主体は、自分自身に他ならないのです。

Difficulty of Sharing Value / 価値共有の喜びと難しさ

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趣味における価値評価は至極個人的なものであり、極めて主観的なものです。決して普遍的・絶対的ではありません。それだけに多種多様な趣味が存在し、さらに細かい対象の選択やハマるツボ、掘り下げる角度や深さにも個人差があって、その価値を他者と共有するのは容易くありません。

私が勤める企業約400名の従業員の中でも、1/43精密モデルカー収集という趣味を共有している人物は、残念ながら居ません。マイナーだからと言ってしまえばそれまでですが、総じて趣味人の置かれた環境は、多かれ少なかれ似通っているのではないでしょうか。

観劇やスポーツ鑑賞など、大多数が一堂に集合する趣味なら、共通の趣味人が見つかりやすいものです。しかし、モデルカーのような物品収集、特にレア物が絡む場合は、お店の人と仲良くするのは必須でも、他のコレクター達は“競合者(ライバル)”であり、横方向の交流は盛んではありません。

つまり、趣味の追究は、基本的に孤独な作業です。何より自分との対話が重要ですが、そうして培った知見を他の趣味人と共有・交歓できれば、ちょっとした文化交流であり、大きな喜びが得られます。さらに、異なる視点からの知的刺激が、自分の器には無かった厚みと広がりを与えてくれます。

Cost to Value / 価値と代価

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自分の中でどんな価値評価を下しても、代価を伴う限りは、社会一般の経済的評価の洗礼を受けてしまいます。平たく言えば、「こんなモノがこんな値段するの?」ということです。業界内の市場価格を知識で分かっていても、代価に見合う価値が認められないなら、自ら手を出すには至りません。

コレクター歴を何年も重ねれば、業界(その趣味の市場)内の価値判断力が高まり、その世界に没頭すればするほど、それ以外の市場環境との価値判断に大きなズレが生じてきます。その世界の部外者が趣味の代価を高いと感じる一方で、私の様な貧乏趣味人は、コレクションの充実に貢献しない物品への代価は、浪費として節約するようになります。

そこで私は、モデルカーを基準として一般の物品を価値判断する独自の通貨単位を設けました。当時の商品価格を基に、ザックリと「3万円=1BBR」、「5千円=1ミニチャンプス」です。BBR製モデルカー1台が、ミニチャンプス製モデルカー6台分に相当します。一般の物品に費やす金額で、何台のモデルカーが買えるかという、趣味人独自の発想です。

モデルカーは大半が海外生産のため、商品価格は中国での労務費高騰、世界的な原材料費高騰、そして円安への為替変動等に大きく影響を受けます。さらに、新興メーカーの台頭によって市場内の価格帯が多様化したため、2010年位からこの単位はあまり利用できなくなりました。

Establishing Reluctant Acceptance / 消極的協力関係の構築

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趣味における価値判断は当事者の主観であり、その評価は共有することが難しく、周囲から理解を得るのは極めて困難です。それなりの出費が伴う場合、特に家族などの身内から、十中八九強烈な反対に遭遇します。趣味人にとってまず越えるべきハードルは、家族なのです。

第1節でも触れた通り、趣味道に邁進するには、自衛のための理論武装が必要です。まず諦めるべきは、趣味の対象そのものの理解を得ることです。価値は相対的ですので、歯車は噛み合いません。100%不可能だと肝に銘じてください。決して、その魅力を語ってはなりません。逆効果です。

趣味人として賢明な戦略は、対象が何であれ、「趣味に没頭することの効果効能」を理解してもらうことです。いかにも真理を得たような冷静沈着かつ自信に満ち溢れた姿勢で、趣味がいかに人生を豊かにするか、頭脳と精神の健全性をいかに効果的に保つ「良薬」であるかを語るのです。

2000年にWHOが健康寿命(Healthy Life Expectancy)という概念を発表しました。寝たきりにならず、痴呆にならず、健やかな長寿を全うするために、あなたは趣味に取組んでいるのです。費やす代価は、心身を健全に維持するための薬代です。内容の賛同は得なくても、趣味の活動を黙認してもらえる、“消極的協力関係”の構築を目指しましょう。

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