Chapter 1 - Section 3
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第1章 第3節
モデルカーにはその成り立ちや発展の過程により、異なる商品形態が存在します。組立てが必要な「キット」か、組み上がった「完成品」かという製品状態、外観だけを再現した「プロポーション・モデル」か、内部機構まで作り込んだ「フル開閉モデル」かという製品形式などが、作品によって複雑に組合わさり、モデルカーという商品を形成しています。
Description
Giannini is an Italian car manufacturer originally founded in 1920 by Giannini brothers of Attilio and Domenico and based in Rome. Their tuning cars had entered races since the first edition of the Mille Miglia in 1927 and won some races. In 1961 they separated and Domenico began modifying Fiat cars. This 590 GT is based on Fiat 500F with expanded 586cc engine and ready for racing (Assetto Corsa in Italian). Model cars of Giannini are not popular and this is one of nice resin factory built models by Italian Carrara Models of Denis Carrara.
作品解説
ジャンニーニはイタリア・ローマを拠点とする自動車メーカーで、1920年にアッティリオとドメニコのジャンニーニ兄弟が創業しました。彼らがチューニングした車は1927年の第1回ミッレミリア・レースから参戦し、優秀な成績を収めています。1961年に2人は袂を分かち、ドメニコが自動車事業を率いて、フィアットのチューニングカーを世に送り出しました。590GTはフィアット500Fを586ccエンジンに拡大しており、アセット・コルサ(イタリア語で「レース用のセットアップ」)はレース仕様車を意味します。ジャンニーニのモデルカーは数が少なく、写真はイタリアのデニス・カラーラが主宰するカラーラ・モデルのレジン製ファクトリービルトです。面白い車種選定と高品質かつ低価格が定評です。
Creativity for Customers / 顧客のための創意工夫
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モデルカーが商品として提供されるとき、主流を占めている最も標準的な形態があります。1/43完成品では、高額レジン製モデルと、親しみやすいダイカスト製モデルの2系列に大きく分かれます。他にも、ギフト・ボックス(化粧箱)という開閉できる紙箱様式や、プラスチックの箱を開いて台座にする様式など、少し変わった商品形態も存在しています。
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レジン製の精巧なモデルは、往々にして平坦で少し大きめの台座に固定されており、本体前後の空き寸法が2:1ほどで、前方にはモデル名やシリアル番号などが刻まれたプレートが取付けられています。
その台座に、ホコリ除けとして透明のアクリルケースが被せられ、さらに保護・運搬用の丈夫な紙製の外箱に収められています。商品として豪勢なパッケージですが、当然価格に反映されており、さらにモデルを展示する際は、外箱を外してどこかに収納しなくてはなりません。
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ダイカスト製モデルの標準的な様式では、紙製の外箱に窓が開いており、そのままで内部のモデルカーを確認できます。モデルの視認性と固定の作業性を高めるためか、台座のモデル固定面は台形状に高くなっていることが多く、窓側の傾斜面を利用してモデル名が記載されます。台座の大きさや形状はクリエイター(製造メーカー)によって個性がありますが、一様に透明ケースはアクリルでなくプラスチック製です。
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モデルカーでは、材質に関わらず未組立「キット」状態での商品が存在します。よく知られている1/24プラスチック・モデル(プラモデル)は、大量生産のため安価で広く流通しています が、スケールを問わずホワイトメタルやレジンによるキットは、ほとんどが少量生産の家内制手工業製品です。高額である上に流通経路と数量が限定され、さらに2000年代後半から新しく発売される商品数は減少の一途を辿っています。
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完成品と同じく、キットもメーカーによって製品状態に差があります。写真のキットは、日本のメイクアップ社製1/43カウンタックです。開閉機構を持たない「プロポーション・キット」に属し、このクラスでは最上位の品質に仕上がっています。
パーツ構成は一つの完成形に到達していると言え、シャーシ周りはメタル(時にレジン)、ボディとインテリアはレジン、細かい部分はエッチング、ライト周りは透明プラスチック、ウィンドウ・シールドは平板式クリア・シートやバキューム・フォーム、エンブレム周りはデカールという様式が標準です。
レジン製キットは、車以外の造形物でガレージキットと呼ばれている模型分野に属します。キットの組立方法は、プラモデルとは少し手間と工程が違っていますので、詳細は第5章「実践方法」第3節「組立方法」をご覧ください。数少ないですが、フル開閉モデルのキットも発売されています。
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キット形態の商品は、同時に組立済みの商品、つまり「ファクトリー・ビルト」の形態で発売されることがあります。2000年代後半からレジン製であっても完成品が主流となり、キットの商品化の方が珍しくなりました。購入したキットを各自が組立てたモデルは、作者がプロでも素人でも「ハンド・ビルト」と呼び、メーカー完成品とは区別して位置づけます。
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写真のモデルは、先に紹介したメイクアップ社製1/43カウンタック・キットのファクトリー・ビルトです。最後発の製品化であることを差し引いても、1/43モデルカーにおけるカウンタックの決定版となっています。メイクアップ社のブランド名はアイドロンで、実車の歴史的評価に基づく車種選定や造形の正確さ、細かい作り込みなどに定評があります。
多くのキットでは組立説明書(インストラクション)が乏しく、ハンド・ビルトだと実車情報の精通度合いによって、間違った塗装や組立をする場合があります。一方、メーカー完成品だと、実車情報を基に設計開発した張本人が責任を持って作品を仕上げるため、そういう心配がありません。
その代わり、もともと作品の再現度が不十分な場合、キットであれば改造や修正を施した上で、納得いくレベルに組立てられますが、完成品は気に入らなくても修正ができず、そのまま受け入れざるを得ない点が欠点になります。
私がロンドンで収集を始めた頃は、キットでしか発売されていない魅力的なモデルカーが数多くあり、その組立用資料として実車の専門書などを収集し始めました。並みの実車ファンより充実しているでしょう。作品の良さを理解するには、最低限の実車情報も押さえておかなくてはなりません。
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製作過程に関わらず、完成したモデルカーには幾つかの作品形式があります。それぞれに特長があり、クリエイターの個性と創意工夫が発揮される領域です。
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見たままの外観を再現することで、実車の魅力をモデルカーとして表現した形式がプロポーション・モデルです。1/43モデルにおいては主流であり、大半を占めています。キャビン(乗員室)の内装(インテリア)再現は、作品によって差があります。屋根を開いたり取り外してオープン形状にできる車種(コンバーチブルやスパイダーなど)には、屋根パーツの脱着が可能なモデルもあります。1/24や1/18でも、基本となるのはこのプロポーション・モデルです。
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車体のどこか一部に開閉ギミックを設けることで、実車の魅力をモデルカーとして表現した形式がセミ開閉モデルです。1/43モデルにおいては、主にエンジン・カバーやドアに開閉機構が設けられます。ミッドシップ車では、後方カウルが開閉し、シャーシごとエンジンが露出するモデルもあります。バリオルーフなど屋根の電動開閉機構を持つハードトップ車では、特徴的な格納ギミックを再現した意欲作もあります。
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前後左右一通りの開閉部分に可動ギミックを組込むことで、実車の魅力をモデルカーとして表現した形式がフル開閉モデルです。最も高い造形力と数多くのパーツが必要で、特に1/43では最難関のモデルカー形式です。そのため、作品数は極めて限定されており、材質に関わらずキット、ハンドビルト、ファクトリービルト共に、特別なモデルに属します。一方、ダイカスト製の1/18モデルでは、比較的数多くの作品で採用されています。
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車体の主要な可動部分を開いた状態で固定することで、実車の魅力をモデルカーとして表現した形式がオープン固定モデルです。展示状態ではフル開閉モデルと変わりませんが、可動ギミックが不要な分だけ、モデルカーとしての造形負担は軽減します。そのため、フル開閉が困難な1/43で若干数の作品が存在しています。他のスケールではほとんど見かけることはありません。
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