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Lancia Stratos / ランチア・ストラトス

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Rally Purpose Built Roadcar / ラリー勝利を宿命づけられたロードカー

Chapter 6 - Section 1 - Subsection 5

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第6章 第1節 第5項

1970年代、世間一般でのスーパーカー・ツートップは、ランボルギーニとフェラーリでした。圧倒的な2大イタリアン・ブランドに割り入って、人気・実力共に特筆すべき存在感を放っていた車種があります。ラリー勝利のために企画・設計・製造された生粋のコンペティション・マシン、ランチア・ストラトスです。

ボディスタイリングは、カウンタックを手掛けたマルチェロ・ガンディーニ、パワーユニットはフェラーリ製ディーノV6エンジン、フィアット傘下の新生ランチアに3年連続WRCタイトルをもたらすなど、知名度の理由は数々あります。ここではデザインの変遷を辿りながら、ストラトスの魅力を紐解いていきます。

Stratos Zero 1970 - Concept Car / ストラトス・ゼロ 1970年 - コンセプトカー

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ストラトスの原点は、ベルトーネが70年11月にトリノショーで発表したコンセプトカー・ゼロです。ランチアから生産契約を受注したいベルトーネは、カラーボを凌ぐほどのウェッジ・シェイプ・ボディで注目を集めようとインパクト勝負に出ます。

ランチアの設計部門には空振りでしたが、ランチア・フルビアのパワーユニットをミッド搭載した実走可能車だったため、ミッドシップ・ラリーカーの生産に関心のあったモータースポーツ部門から、2箇月後に量産化の打診を受けることになります。

Stratos HF Prototipo 1971 - Prototype / ストラトス HF プロトティーポ 1971年 - プロトタイプ

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HF Squadra Corse

HF=High Fidelity

ランチアからミッドシップ・ラリーカーの開発を依頼されたベルトーネは、わずか10箇月の短期間でラリー専用設計の実戦的プロトタイプを製作し、71年のトリノショーで発表します。

ランチアのワークス・ラリーチーム名「HFスクアドラ・コルセ」に因み、車名はストラトスHFと再命名されました。HFとはハイ・フィデリティの頭文字で、高性能・高品質という意味です。

Stratos HF 1974-75 - Production Car / ストラトス HF 1974~75年 - 量産市販車

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ストラトスHFの実戦投入計画はこうです。当時はWRC(世界ラリー選手権)発足直前で、該当するグループ4の規定では、連続する12箇月間でロードカーを400台以上生産しなければなりません。そこで、試作車をグループ6(プロトタイプ・スポーツ)からラリーに投入し、実戦を通じて成熟を重ねながら、ホモロゲーションを取得する作戦でした。

ラリーで勝利するために専用開発したストラトスHFのポテンシャルは高く、次々と勝利を積み上げていきます。その過程で、細部の形状なども煮詰められていきました。73年にはエンジンをディーノV6に正式決定し、翌74年10月にホモロゲーションを取得すると、WRCを74~76年まで3連覇するという偉業を成し遂げ、見事に開発目標を達成したのです。

Lancia Stratos HF Stradale - Road Car / ランチア・ストラトス HF ストラダーレ - ロードカー

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基本的なフォルムは71年のプロトタイプそのままに、排熱効率などを考慮した若干の細部変更が加えられ、ロードカーとしてストラトスHFの生産が開始されました。

最初期の50台が上の写真のようなシンプルな状態で、カタログ写真にも使われていたため、1/43モデルカーなどでロードカーとして製品化される場合の基本形となっています。

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ラリーで勝利するために専用開発されたストラトスは、WRCにおける当時のライバル、アルピーヌA110やポルシェ911の運動性能を超える設計が必然的に求められました。

そこで、A110より80mm長いだけのホイールベース内に、911を上回る2.4リッター190psのエンジンをミッド搭載し、A110より短く911より幅広いボディを獲得するのです。

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実戦を通じて成熟を重ねるうちに、ルーフとリアのスポイラーがほぼ標準装着されるようになりました。上の写真は、リア・フェンダーを張り出し、ラリー用のホイールを装着した特別バージョンのモデルカーです。実際にラリーに出走したバージョンのモデルカーも、数多くリリースされています。

ストラトスの大活躍でランチアの知名度は上がりましたが、専用設計が仇となり一般車種の売上には貢献しませんでした。そこで親会社フィアットは、主力セダンの131をラリー用車種に変更し、強いストラトスの活動を制限します。ラリーのサラブレッドは、身内の手で戦線離脱に追い込まれていきました。

Retro Design Concept Cars / 復刻デザイン・コンセプトカー

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不本意な形でラリーの第一線を退いたストラトスは、開発における素性、エンジニアリングの独創性、スタイリングの芸術性、ハンドリングの卓越性、WRC制覇のカリスマ性などから人気は衰えず、復活を熱望する声はよく聞かれます。

それに応えて、ストラトスのレプリカを製造販売するメーカーは複数存在しており、時代を超えて伝説のチャンピオンカーを疑似体験することができます。ここではストラトスのデザイン・フォーマットを最新技術で再現したプロジェクトを紹介します。

Stola S.81 Salone di Torino 2000 / ストーラ S.81 トリノショー2000年

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ABC Brianza

ストラトス・ゼロ(1970年)誕生30周年となる2000年トリノショーにて、オリジナル・デザインを手がけたマルチェロ・ガンディーニがストラトスを現代風にリ・デザインし、トリノのストーラ社に製作させたコンセプトカーです。

71年に発表したプロトタイプをゼロ風のウェッジシェイプに再加工したようなスタイリングで、ボディカラーもプロトタイプを意識した光沢オレンジです。1/43モデルカーは、唯一イタリアのABCブリアンツァ社がキットと完成品で製品化しました。

Pininfarina New Stratos 2010 / ピニンファリーナ・ニュー・ストラトス 2010年

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Michale Stoschek

ストラトス・ゼロ誕生40周年となる2010年、ドイツの実業家 ミハエル・シュトテック氏がピニンファリーナに特注し、フェラーリF430をベースにストラトスのエンジニアリングを現代に蘇らせたワンオフモデルが、このニュー・ストラトスです。

オリジナルのディーノV6エンジンに対し、F430のV8エンジンが2倍以上の540psを発揮します。市販化を想定していたもののフェラーリの合意が得られず、量産化は実現しませんでした。モデルカーは複数のメーカーから発売されています。

Personal View
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私的見解
ストラトスは、カウンタックやイオタと並びミッドシップ・スーパーカー黎明期を代表する1台です。WRC連覇が強調されますが、継続的にTV放送されない限り、レース実績は一般には浸透しません。ストラトスの魅力は、見ただけで心奪われる個性的かつ機能的なデザインに他ならないのです。ミウラ同様、丸ごと開く前後カウルもその魅力の一つです。私にはまだ、1/43フル開閉キット組立やレース仕様車のロードカー化などのプロジェクトが残っています。

Topics / 新着情報

2017.02.06

第7章「博物館」・全4節を新規掲載

遂に全7章(日本語コンテンツのみ)の執筆を完了。英日対訳の日本語部分だけで約1年半かかってしまった。意図的に先延ばした箇所があるものの、何とか最後までたどり着いた。拍手!拍手!

2017.01.15

「車種リスト」ページを新規掲載

本編ページに掲載したモデルカー作品を検索するための、アルファベット順車種リストページを作成

2017.01.09

第6章・第5節「製品化要望」を新規掲載(第6章完了)

第4節の掲載から3箇月以上間隔が開いてしまったが、モデルカーを過去・現在・未来の時間軸を通して考察することができた。主要な日本語コンテンツとしては、第7章の「博物館」を残すのみ。

Headmaster / 学院長

1965(昭和40)年生まれ射手座A型のスーパーカーブーム直撃世代。小学高学年でガンディーニ・デザインに魅了される。
時を経て1990年、ロンドン駐在時に英国製の1/43精密モデルカーに出会い収集を始める。1998年の帰国後は、国内の専門ショップに収集拠点を移し、現在に至る。
スーパーカーを主軸とするロードカー・2ドアクーペに車種を限定することで、未組立キットを含め約5000台を収集。
モデルカーの認知拡大、コレクターへの支援、業界の充実発展を願い、主力3700台を『世界モデルカー博物館』に展示。
同時に、展示作品の愉しみ方を解説する本サイト『モデルカー学』を開講。現在も「コレクター道」を実践・追究している。

―2015年5月現在―

2017年6月末に英国ロンドンへ再赴任し、現在ロンドンから欧州の様々な情報をブログとFacebookで配信中。

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