Definition / 定義

実車ではイセッタやメッサーシュミットなど、バブルカーとも呼ばれる小型自動車をミニカーと呼ぶことがあります。一般的にはミニチュア・カー（ミニチュア・ビークル，ミニチュア・オートモービル等）の略称で、実車を縮小した自動車模型を指します。その範囲は広く、目的・用途・大きさ・材質・品質など様々です。しかし、小型であっても、模型としての趣旨を持たないラジコン・カーやスロット・カー、道具として実用に供する子供向け乗用玩具などは、ミニカーに含みません。

ミニカーは、リアル・カー（実車）に対するミニチュア・カー（自動車模型）という分野の呼称ですが、実態はほとんどが子供向け玩具（トイ）でした。

その一方で、大人の美的感性に訴える高い造形力のミニカーが１９９０年代頃から普及します。“大人のコレクター達”という新しい市場に向けた産業の振興です。元の実車の持つ魅力をできる限り正確に縮小再現し、模型としての美と精巧度が追究されていきました。

そうして確立されたのがスケール・モデル・カー（自動車の精巧な縮尺模型）、略してモデルカーです。子供の玩具であるミニカーに対し、鑑賞用の大人の美術工芸品と位置付けることができます。ただし、縮尺・材質・形態などは様々あり、コレクターの需要やクリエイター（モデルカー・メーカー）の技術革新などによって、変化・進展を続けています。

モデルカーは精巧であるほど、実車の“偽物”だと揶揄されることがあります。もちろん実車あっての模型ですが、自動車が移動する「道具（工業製品）」なのに対し、モデルカーは感性を高める「鑑賞品（美術工芸品）」であるため、両者は全く異なる本質で独立して存在しています。芸術家の描く風景画を、自然の偽物とは呼びませんよね。

重要なのは、モデルカーの何が鑑賞に値するのかです。自動車は３世紀にまたがって発展する最高の工業製品の一つです。１台１台にブランドの伝統、開発者の情熱、技術者の創意工夫、デザインの新機軸、最新の科学技術など、その時代のエンジニアリングの粋が込められています。

それを全長わずか１０ｃｍ（１/４３の場合）、掌サイズの造形物として象徴的に凝縮した 『３Ｄ情報』 がモデルカーです。直視できる形状表現の美しさを鑑賞するのはもちろん、存在が語りかける実車の物語に耳を澄ます醍醐味があります。

当サイトではモデルカーを写真で紹介していますが、３Ｄ情報としての鑑賞方法は現物を直接ご覧になるに限ります。世界モデルカー博物館で“本物”のモデルカーを堪能して下さい。

私が小学低学年のころ、叔父がよくプラモデルやミニカーを買ってくれていました。初ＴＶドラマ時代のバットマンカーや、今思えば１９７０年発表のマツダＲＸ-５００などもありました。

ミニカーに限らず、キャラクター物のプラモや玩具にも言えるのですが、当時から私は「大人達は子供を馬鹿にしている」と感じていました。何故なら “子供用” という理由で意図的に造形の手を抜いていたからです。「子供だから認知力が低い」「この程度で大丈夫」と決めつけていたのでしょう。形状への美意識や感性は、大人も子供も関係ありません。

価格の問題は構成・材質・工程などであり、造形の完成度は直接影響しません。形状再現は原型師の塩梅一つです。１０歳に満たない児童に、再現度の低さを指摘される大人の造形物が “トイ品質” です。１９７０年代後半のスーパーカーブームで誕生した一連の国産ミニカーも、遊び倒す玩具としては魅力的でしたが、自動車模型としては落第点です。

もし私が２０１５年に１０歳だとしたら、迷わずレジン製の精密モデルカーを選びます。もちろん、金額の関係で１台購入するまでに数年かかるかもしれませんが。

まず、縮尺（スケール）の正確さが重要です。時々ガレージキットなどでノン・スケールという代物がありますが論外です。正確な統一スケールは、コレクション充実の必須要件です。

モデルカーの造形で最も大切なのは、全体のフォルムです。形状が違えば、全く別物になってしまいます。実車の特徴（魅力）が十分再現（反映）されていなければなりません。

モデルカーの品格は塗装の美しさにかかっていると言っても過言ではありません。複雑な造形や細い筋彫りを潰さず、均一で滑らかな表面と美しい光沢が塗装に求められます。

全体のフォルムが良い上で、筋彫り、ヘッドライト、ウィンドウ、ワイパー、サイドミラー、ホイールなど、各部の細かいパーツまで手を抜かず作り込むことが求められます。

フォルム、塗装、部品が完璧でも、取り付けたパーツの歪みや隙間、接着剤のはみ出しなどがあれば台無しです。モデルカーとして統合する組立に高い完成度が求められます。