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2018.02.28

雪のロンドン

自宅のポーター(マンション常駐の管理人)に、「ロシアから寒気を連れてきたな」とからかわれたが、ロンドンは昨日27日から雪になった。昨日はロンドンを離れていたので、しっかりと雪景色を見たのは今朝が初めてとなる。

街並みの古いロンドン市街は、大型マンション等以外では地下駐車場が無く、どんな高級車でも路上駐車(ライセンス式)が当たり前になっている。そのため、フェラーリやポルシェでも路上駐車である限りは積雪の餌食だ。めでたい紅白色なのがどこか微笑ましい。こんな高級車、日本では考えられない光景だ。

もちろん、ジャガーもメルセデスもBMWもご覧の通り。

ロシアの寒さを体験してきたので、この程度の雪はへっちゃら。靴も防寒下着も防寒ジャンパーも防寒帽子も揃っている。ドンと来い雪のロンドン!!

2017.09.23

フランクフルト・モーターショー③

 もう一つの目玉!和製電動スーパーカー見参: アスパーク・アウル

メルセデスAMG・ハイパーカーと並び、私の中でもう一つの目玉車種が、このアスパーク・アウル(OWL)である。

会場ではスタッフの方がお声をかけてくださり、開発趣旨等を色々教えてくださった。彼曰く、社長の吉田眞教氏(44歳なので結構世代が若いとは思うが)はスーパーカー・ブームの影響を強く受けており、実用を越えた正に “スーパー” な自動車を自分で開発するため、まず人材派遣会社アスパーク(ASPARK)を大阪市に設立。そこでエンジニアを雇って派遣しながらノウハウを蓄積し、3年前に世界最高加速の電気自動車アウル(OWL)の開発に着手して、遂に初お披露目の日を迎えたという訳だ。

車名は、夜に音もなく獲物を襲う猛禽類のフクロウ(英語でアウル)に因んでいる。ガルウィングやボディ形状もあるだろうが、やはり100%電動(スーパーカーでは世界初)による “静かな速さ” を象徴しているのだろう。そのスタッフの方によると、1台4億円で限定50台の受注生産販売を2年後には実現したいとのこと。私も本物の和製 “スーパー” カーの誕生を心から期待している。ただ、個人的には単にスペックを競うのではなく、大人になった昔の “スーパーカー少年” 達(私を含めて)の後半人生に、新しく尖がったライフスタイルを提唱できる、包括的な視点からのスーパーカー企画をお願いしたいところだ。

前回私がフランクフルト・モーターショーを訪れた1995年は、ロータス・エリーゼがバスタブ式モノコック・ボディと共に初披露され、イタリア時代のブガッティEB110やフランスのベンチュリ、アストン・マーティンで私が一番好きな93年式ヴァンテージなど華やかな展示車両の中に、和製スーパーカー(?)のジリアート・エアローザがあった。ランボルギーニと提携して発売直前まで行ったものの結局プロジェクトは頓挫した。アスパーク・アウルもその二の舞とならず、成功することを切に祈っている。

私が撮影してYouTubeにアップしてある動画

 その他の日本車: ホンダ、レクサス、マツダ

日本の普通自動車で唯一のミッドシップ車といえば、ホンダのNSXである。性能も価格もスーパーカーなので、当然の如くレース仕様車が展示されていた。国内のスーパーGTにはNSXコンセプトの時代から参戦している。トヨタ・ヤリス(Yaris)は日本国内ではヴィッツ(Vitz)の名で知られる大衆車だが、欧州ではラリーの活躍によってヤリスの世界的知名度は高い。因みに私の父の最後の愛車がヴィッツだった。マツダは、2座オープン・スポーツ世界最多販売記録保持車のロードスターに、遂にハードトップ・モデル(待ってました!)を投入した。因みに、私のイギリス赴任前の愛車はマツダ・デミオ(しかも初代)だった。

マツダ・ロードスターのルーフ・オープン・アクション
背の高いドイツ人に交じって、横に広いずんぐりむっくり日本人が目立ったのか、マツダ・コンパニオンの女性が「ルーフ・オープンを見るか」と声をかけてくれて、私のため(?)にハード・トップ・ループを開いてくれた。さすが日本車のコンパニオンは日本人に優しい。オープン時がスパイダーではなくタルガ形状なので、屋根板を収容するだけのシンプルなアクションである。

 掘出し物?たくさんの旧車達: メルセデス、マツダ、コルベット、ケーニッヒ等 

温故知新ということか、メルセデスはかつての試作スーパーカー・C111を展示し(メルセデスらしくなく、一般入場者のアクセスが制限されていた)、マツダは世界初の量産ロータリー・エンジン搭載車・コスモスポーツを展示していた。マツダのコンパニオン(?男性だったけど)に、「我々も自社の博物館に展示している」と伝えたら、「広島(マツダ本社)か?」と問い返されたので、「いやいや、高知の創造広場アクトランド内、クラシックカー博物館だよ」と自慢げに教えてあげた。

主役の自動車メーカー達とは別に部品メーカー等の出展ホールがあり、その中の旧車展示ブースが圧巻だった。展示趣旨は色々あったようだが、ケーニッヒ512BBターボの実車にただただ感動し、それ以外の情報は吹っ飛んでしまった。

結局、新車発表・即売会はどちらかというと自動車メーカーの営業部隊であり、自動車ファンにとっては新型車でなくとも、過去の名車・旧車の展示で十分楽しめるということだ。実際ヨーロッパでは、旧車の展示会が各地で催されており、以前の駐在中にはベルギーのレトロモービルへ行ったことがある。そういったイベント系の他にも、欧州各地に自動車博物館があるので、それらをひっくるめて今後の欧州散策テーマにすることとしよう。

 フランクフルト・モーターショーのレースクイーン事情

記事①の最後に、赤黒2トーンのオペルの写真を掲載したが、車にカメラを向けたらコンパニオンが意図的に画角から離れようとした。「入って」と手で招いてあのショットを撮った。つまり、出展側も見学側も大前提は自動車そのものの堪能であり、コンパニオンは飽くまでアシスタントで、撮影される対象という意識も習慣も無いということだ。だから衣装も地味。

唯一、撮影される前提の立ち居振る舞いをしていたのが、旧車コーナーに居た左の2人のバニーガールである。彼女らはコンパニオンではなく、雑誌(旧車コーナーの主催者)をアピールするための本物のモデルのようだった。

モーターショーとしては、フランクフルトの姿は日本より成熟している。しかし、日本ならではの “Kawaii 文化” の成熟という意味においては、華やかなレースクイーンを擁する東京モーターショーの方がエンターテインメント性に優れていると言えるだろう。楽しみ方は色々だ。

 モデルカーの販売コーナー: オートマニア

フランクフルト・モーターショーには、実車やパーツの展示だけでなく、モデルカーや書籍などの関連グッズ販売コーナーがある。また、各ホールの外にある屋外広場にはフード屋台の他にグッズ小屋も数多く出されていた。私が会場に入って、真っ先に訪ねたのが実はここ。実車展示は逃げないが、モデルカーの掘出し物は誰かに先買われると購入機会を逸してしまう。

また、地元ドイツの王者メルセデスは、自社出展会場の中にモデルカーを含むグッズ販売コーナーを設けていた。販売中のモデルカーを柱に縦に並べたお洒落なディスプレイ。さすが王者である。コレクターにとっては、この “メーカー特注モデル” というのが曲者で、通常の流通に乗ってこない。既に持っているかもしれないので “最新” であることをしつこく確認し、メルセデス・AMG・2ドア・クーペを1台購入した。買わずに後悔するより、買って後悔する方がコレクターとしてのダメージは少ない。

結局、全体で15商品(16台)を購入。2/3は既に保有済みだが、イベント会場の割安価格だったため承知の上で購入した。

 今後に向けた反省点

結論から言うと、私が好きなスーパーカーや2ドア・クーペは市場としてはニッチでマイナーな領域のため、社会情勢や展示会場の国情に大きく影響を受けるということ。従って、車を知らなくても大金を払ってポイっとスーパーカーを購入する金余り富豪国家や、最新デザインを世に問う伝統のモーターショーなど、開催地の特性を十分認識しておく必要がある。

確かに一昨年の東京モーターショーもそうだった。上海と違って浪費家大富豪の居ない東京だからと思っていたが、自動車大国のドイツでも似たような状況だったということは、こちらから的を絞って出向くしかないという訳だ。11月には金余り国家ドバイで、来年3月にはデザイン先鋭地ジュネーヴでモーターショーが開催される。さあ、乗り込む計画を立てようか。

2017.09.21

フランクフルト・モーターショー②

 仕方なく出展?控えめなイタリアン・スーパーカー: フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ

既に新型車の発表は終えているためか、フェラーリやランボルギーニといったイタリア製老舗スーパーカーは寂しい展示内容だった。もちろん、展示場の柵はたくさんのドイツ小市民達に取り巻かれ、一部の裕福そうな人達だけが柵内に入り我が物顔で座席に座るといった光景が繰り広げられていた。そう思うと、ドイツ車メーカーはコンセプトカー等でなければ基本的に近付き放題の触り放題だから、偉いよね。ランボルギーニはフォルクスワーゲン・グループでありながら、たった2台しか出展しておらず、“仕方なく付き合いで出展している” 感が否めなかった。

 フランス車の皮を被った独フォルクス・ワーゲン: ブガッティ・シロン

ブガッティも、フランス車・ブランドでありながら親会社はフォルクスワーゲンなので、付合いで出展したといった感じ。やはり、初お披露目の車種でなければ、展示の華やかさも話題性も数段トーンが低くなる。シロン(Chiron)という車名は、先代ヴェイロン開発時の1999年にイタルデザインのスタディ・モデルに付けられていた。ヴェイロンもシロンも、往年のブガッティ・レーサーであるピエール・ヴェイロンとルイ・シロンの名に因んでいる。新興のスーパーカー達とは歴史と伝統が違うよという主張だろう。フロント・グリルの42という数字は、0-400-0km/hを世界記録の42秒(41.96秒)で達成したという自慢だ。本当に凄いのなら、過去のレースの栄冠やスペックを鼻に掛けず、黙って現代のF1かル・マンで実力を証明すべきだろう。

私が撮影してYouTubeにアップしてある動画(装置の不備で音声は未録音)

 影の薄い英米車: マクラーレン、ジャガー、ベントレー、米フォード

イタリア車であの程度だったので、英国車のマクラーレンなどは出展すらしていなかった。左下の写真は、屋外に何かの関係で展示されていた1台である。アストン・マーティンは参加すらしていなかった。ドイツを市場と見なしていないのだろうか。まあ、ロンドンに住んでいれば通勤時だけで毎日5台はアストン・マーティンを見る。最大の市場はイギリス国内かもね。

 華やかなレーシングカー: GTレーサー、フォーミュラ カー、ル・マン カー、ラリー カー等

ご存知のように、自動車はその誕生と共にレースという競技を生み出している。そのレース専用にチューニング、又は専用開発されたレーシングカーは、何と言っても自動車業界の花形である。アウディやベンチュリがフォーミュラE カーを、ルノーがフォーミュラ・コンセプトカーを、ポルシェやトヨタがル・マン カーを展示していたが、一番賑わっていたのがフォードGT(2代目)の展示ブースである。68号車(展示車両とは別)が昨年のル・マンで初参戦にて初クラス優勝を果たすなど話題性もあった。

レポートの最後となる「フランクフルト・モーターショー③」では、今回初お披露目となった和製電動スーパーカーを紹介。

2017.09.19

フランクフルト・モーターショー①

 会期2017年9月14日~24日: ドイツ国民のためのドイツ車の祭典を訪問(9月17日)

ふとしたことで、次の週からフランクフルト・モーターショーが開催されることを知った。前の欧州駐在時、1995年にたまたまフランクフルトへ自家用車で遊びに行ったらホテルが一杯と聞かされ、モーターショーの開催を知って急遽訪ねたことがある。その回は社会情勢上スーパーカーが盛りだくさんで、非常に満足のいく内容だった。その印象が強いため、急遽航空券と最寄りのホテルを予約し、一般公開される最初の週末にフランクフルト訪問を決定。9月16日(土)は重要な用事があったため、その後の夜のルフトハンザ航空便でフランクフルトに入り、翌17日(日)の朝一から終日見学することとした。

思い知らされたのは会場の広さ。各ホール間の移動にかなり歩かされる。帰りの飛行機があるため、無駄なく全体を回ろうと心掛けたが、なかなか思う通りにはいかない。昼飯も取らず、正に駆け足で移動した。圧倒的だったのは王者メルセデスで、地上数階に及ぶ一つのホールを丸々利用していた。BMWなど他のドイツ勢も多くのスペースを占有しており、ドイツ国民のためのドイツ車の祭典という性質が色濃く出ていた。そのためか、メルセデスもポルシェ(下の写真)もコンセプトカー等以外の展示車には触り放題くらいの勢いで開放しており、エンジニアなのかマニアなのか、シャーシの下面をのぞき込む見学者もいて、ドイツにおける自動車文化の浸透ぶりを再確認した次第。さすが世界初のガソリン車を生み出した国だけのことはある。

 今回の目玉!ハイブリッド・スパースポーツ: メルセデスAMG・パイパーカー

モーターショーは俗にいう “見本市” で商談が本義のため、一般公開される前にメディアやビジネス関係者らに先行公開されるしきたりだ。その際に最も話題を集めた車が、メルセデスAMGの「オンロードでの走行が可能なF1マシン」こと「プロジェクト・ワン」ハイパーカーである。AMGの創立50周年記念車でもあり、メディア初公開時はメルセデスの現役F1ドライバー、ルイス・ハミルトンが壇上に登場し、紹介に一役買った。ロードカーでは珍しい背びれ(?)も、最近のF1トレンドだ。かつて皇帝ミハエル・シューマッハの全盛時代に、フェラーリがF1モチーフを取り入れたスペチアーレ「エンツォ・フェラーリ」を発表した構図に似たものがある。今期はハミルトンが駆るメルセデスがF1を引っ張って行っている。ワールド・チャンピオンを獲得したミカ・ハッキネンの時代以上に、今がメルセデスF1の全盛期ということなのだろう。

 ドイツ人にとっては日常品: メルセデスAMG、ポルシェ、BMW

時代の流れなのだろうが、全体的にコンセプトカーは電気自動車に関するものが多かった。私は原則的に2ドア・クーペにしか興味がないため、写真も撮影しない。左下のメルセデスは写真を掲載するまで4ドアだと気付かなかった。また、オープンカーはできるだけクローズ状態を撮影したかったが、必ずしも閉じてもらえず、時間の関係もあって断念した。それ以前に、車の周りから人が居なくなるのを待って撮影していたため、1枚1枚それなりに時間と忍耐が必要だった。せっかくのモーターショーだったのに撮影だけに時間が取られ、どの車の運転席にも座ることができなかった。

 庶民の味方、小粒ながら粋な車種達: ミニ、スマート・ブラバス、フォード、オペル

ミニも電気自動車コンセプトカーを発表していた。2段目のパール・グレー色の車だ。スマートはブラバスと提携したのか、メルセデスがAMGを自社に取り込んだように、スポーツ・ブランド担当として吸収したのか、同系列で車種展開していた。フォード・フィエスタ(3段目右の2台)は、トヨタ・ヤリスと同様にラリーで活躍していて知名度が高い。添え以上に、全く視野に無かったオペル(最下段)が割と良い形状の車種を出していた。後で知ったが、オペルは今年3月にフランスの「グループPSA」 (旧・PSAプジョーシトロエン)に買収されたらしい。そのため少し垢抜けてきたのだろうか(?)。いずれにしろ、今後に期待。

私が撮影してYouTubeにアップしてある動画

続きの記事「フランクフルト・モーターショー②」では、イタリアン・スーパーカーや花を添える役割のレーシングカーを紹介。

2017.08.20

ロンドン散策 その8

ロンドンはどの方角にレンズを向けても、ポコポコと天に伸びる建設工事用クレーンの多さが目立つ。

 テンプル再び

7月1日(2日付けブログ)にテンプルを訪れた際、王立裁判所(写真右)は眺められても、テンプル教会には行けなかった。そこで8月12日の夕方に行ったものの既に閉まっていたため、教会だから日曜礼拝を一般公開しているだろうと13日(日)の早朝に再び訪ねた。しかし、敷地への扉は固く閉ざされたままだった。敷地は広いのに大通りから入る門は狭く、その建物は私の大好きな“道路出っ張り型”(写真下)である。

テンプル教会への入り口は地味で、気付かず通り過ごしてしまいがちだ。

王立裁判所の前には、道路の真ん中に石柱があり、グリフォン像が鎮座する。

期せずして、英国御用達の紅茶店トワイニングの歴史ある店舗に出くわした。

 ロンドン科学博物館

8月11日にはロンドン科学博物館(The Science Museum, London)を訪問した。表向きは入館無料だが、実質は寄付として然るべき金額を支払うことになる。私のような居住者は、何か税制上の処理があるらしく、色々と聞かれた。

日本でいうなら、上野にある国立科学博物館のような位置づけ。しかし、隣に自然史博物館があるため、ロンドン科学博物館は純粋に人類の手によって生み出された道具や工業製品だけに限定されている。上野の方は自然史も含まれているため、上階にあがらないと工業製品は出てこないが、こちらは入館するや否や、巨大な発動機が出迎えてくれる。

テーマが人工物なので、可能な限り実物が展示されており、小さい道具からロケットまであり、かなり見ごたえがる。ただ、さすがに超大型の船舶やテムズ・バリア(写真3段下)などは模型展示だった。下の写真左端はエニグマである。ナチスドイツが使用していた暗号作成機で、読解にイギリスの天才数学者アラン・チューリングが挑んだ。その成果が現代のコンピューターの起源だとも言われている。ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画『イミテーション・ゲーム』を観ていたので、「これがエニグマか」と感慨深いものがあった。右端の写真は、ロタリー(宝くじ)の当選番号抽選機。これも科学ってことなのだ。

やはり、工業化を進展させるには、動力をどうやって獲得するかがテーマだ。現代の便利な時代(たぶん未来はもっと便利になる)は、先人の知恵と工夫と技術開発が積み重なってこそ存在しているのだと実感した。2段目真ん中の写真は、動力でシャフトを回転させ、そのシャフトからベルトで動力を各種工作機に分割する方式の模型だ。実際に動きを確認できる。ここまで道具の数は多くないが、創造広場アクトランドの「創造館」でも実物を用いて再現している。是非ご覧になっていただきたい。

イギリスは何と言っても蒸気機関の発明者ジェームズ・ワットの国。ワットの蒸気機関や仕事場の再現など展示は充実している。また、ウィリアム・ヘドリー(William Hedley)らが開発した世界初の蒸気機関車プッフィング・ビリー号(Puffing Billy)の実物(下の写真)も展示されている。決してイギリス産の車両だけではなく、アメリカのT型フォードやドイツからはビートル、イセッタ、メッサーシュミッなど、そして日本からは何故か日野コンテッサ(写真割愛)が展示されていた。

私は絵画も彫刻(特にギリシャ・ローマ)も好きだけれど、こういった工業製品の展示はもっと好きだ。前者を“芸術”と呼ぶなら、それは“感性”の賜物で、後者を“技術”と呼ぶならば、それは“知恵”の結集であろう。もちろんそこには、芸術性が必要不可欠ではあるけれど。

入館した途端、子供の頃の気持ちに還ることのできる博物館だ。皆さんも是非訪問されてはいかがだろうか。

2017.08.19

007 博物館 in ロンドン

8月13日に、コヴェント・ガーデン(Covent Garden)を抜けてロンドン交通博物館(London Transport Museum)へと行ったものの、何と土日は閉館とのこと。詰めが甘かった。しかし、その一角に、今回最大の掘出し物ではないかという施設を発見した。その名は、『London Film Museum』。それだけだとピンと来ないが、副題(展示テーマ?)は、『BOND in MOTION -The Largest Official Collection of Original James Bond Vehicles』!!!!

要は、007映画に出てきた乗り物等の博物館ってこと。聞けば3年前に開館したそうだが、「地球の歩き方」にも掲載されていない。映画好き(特に007映画)や乗物好きなら、大英博物館よりこちらの方に行く価値が高いだろう。英国のヒット・シリーズ映画と言えば、ハリー・ポッターなどというポッと出の若葉マークではなく、圧倒的に007映画でしょ。必見!!!

 ジェームズ・ボンドの愛車 : アストン・マーティン

実車が展示されているだけでも嬉しいが、その自動車が作品の中で登場するシーンが映し出されていたり、その作品での衣装やデザイン画なども展示されている。そこは、“自動車博物館” でなく “フィルム博物館” と銘打っているだけのことはある。特に、最新作の『SPECTRE』に登場した、この映画のためだけにアストン・マーティンがデザインした DB10 (4枚目の写真)の存在は大きい。ここでしか見ることができないのではないだろうか。とにかく、展示の質が高い。

 英国車 : ロータス・エスプリ 他

乗物として強い印象を与えた車と言えば、やはり『私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)』に登場する、潜水艦へと変形できるロータス・エスプリだろう。当時は発売されて間もない時期で、型式は S1 (シリーズの第一世代)だと思われる。ジョルジェット・ジウジアーロのデザインしたウェッジ・シェイプのフォルムは、潜水艦になっても美しいままだ。

 その他の国の車達

 小道具や模型

ボンド・カーに並んで有名な007アイテムが、ワルサーPPK。他にも各種携行品のスパイグッズからパスポートなどまで展示されており、007は実在の人物ではと思わせるような演出だ。自動車の他にもバイクやボート、ヘリコプターなども展示されていたが、撮影は割愛した。さすがにスペース・シャトルとなると、実物大ではなく模型だった。それと、スペースの関係か実車がつまらないせいか、フェラーリF355とランボルギーニ・ディアブロは模型だけによる展示だった。アストン・マーティンDB5の模型もあった。スケールは 1/12 ~ 1/8 位ではなかったろうか。きっと、市販商品のはずだ。

カフェやショップもあり、映画のオープニングでよく登場する拳銃のバレル(銃身)から覗いた決めポーズの写真撮影もできる。衣装や小道具は貸してくれる。なかなか憎い演出だ。あと体重を30kg絞ったら、もう一度訪問して写真撮影する予定。皆さんもロンドンに来る機会があれば、是非とも訪問してほしい。必見の価値あり。

2016.05.04

二極化するデザインの方向性

今日はGWの中日。
創造広場アクトランドは、1周年記念イベントを行っているらしい。
招待状をもらっていないので詳細は分からないが、大盛況であることを願う。

いよいよ今日から、ウェブサイト「モデルカー学」の本編記事執筆を再開する。
生業の方で新しいウェブサイトの設計・構築に取り掛かっており、日々時間に追われているが、
何と言っても他者にできない私の存在意義は、実践に基づく『モデルカー学』の確立と普及に他ならない。

その前に、今日は10年ほど前から気になっていた“二極化するデザインの方向性”について考える。

3月29日のブログで触れたジュネーヴ・モーターショー2016で、明瞭に比較できるサンプルが登場している。
1台は、映画にも登場したドバイ・Wモーターズ社のライカン・ハイパースポーツ(Lykan HyperSport)の上位機種、
フェニア・スーパースポーツ(Fenyr SuperSport)、そしてもう1台は、北京の新興メーカー・テックルールズ社の
GT96 TREV コンセプトである。TREVとはTurbine-Recharging Electric Vehicleの略称。

前者が市販車なのに対し、後者は実走可能ながらコンセプトカーであるため、厳密な比較とはならないが、
両者を並べてみれば、近年様々な分野で二極化しつつあるデザインの方向性が面白いほど認識できる。

左がフェニア・モータースポーツで、右がGT96 TREV コンセプトである。私は両デザイン共に気に入っている。
直ぐにでも1/43モデルカーで欲しいところだ。

さて、この2台の違い、皆さんの眼にはどう映っただろうか。

共に2シーター・ミッドシップ・スーパーカーなので、根本的なフォルムはほぼ似通っている。
しかし、左側のフェニアは細かい凹凸が多い複雑な造形であり、右側のGT96は表面が滑らかなシンプルな造形である。

空気抵抗と戦い、ダウンフォースを味方につけ、冷却用に外気の吸排出が必要なスーパーカーであるため、
細かい造形にもエンジニアリング上の必然性があるとしても、両者のエクステリア・デザインの方向性は、
明らかに両極に分かれている。デザイナーは共にその二極の方向性を意図的に創り出したに違いない。

2016年に、こんな両極端なエクステリアのスーパーカーが同じ舞台に登場するのだから、デザインは面白い。
なお、この二極化の傾向は、アニメに登場する架空のメカ(ここでは戦闘用人型ロボット)においても存在する。

左側は2008年に放送が開始された『マクロスFrontier』の主役機、VF-25F:メサイアである。
右側は1993年にOVAが発売された『マクロスⅡ』の主役機、VF-2SS:バルキリーⅡである。
後者の魅力は、バルキリーⅡファンクラブサイト:Passion for Valkyrie II にて語り尽くされている。

メサイアは、CGを用いて技術的に“できる”ようになったため、全体のフォルムで機能美を追究するより、
ただただ細かい情報を盛り込んでしまい、美しいと呼べる形状からは程遠いデザインとなっている。
私は、バルキリーの “折り紙細工化” や “トランスフォーマー化” などと呼んでいる。

一方、バルキリーⅡは、細部に情報を盛り込むのではなく、本質的な美しさをシンプルな描線で創り上げている。
ロボット・デザインの最高傑作の一つ。車で言えば、GT96 TREV コンセプトのデザイン傾向に該当している。

1/43モデルカーを収集していると、新型車種の第1号車が発売された後、レース仕様やフェイスリフト、
ハイパワー仕様などの発展系車種が発売され、その時々には新鮮味を感じるものの、次世代車種が登場した頃には、
最初に出た第1号車の一番シンプルなオリジナル・デザインが、最も魅力的に見えてくることが多々ある。
フェラーリしかり、ランボルギーニしかり、ポルシェしかりである。

これは、空力パーツや細かい凹凸の造形などは、基本的フォルムの車体に対する「付加物」でしかないからであり、
その車の本質(素性)は、シャーシ構造や動力性能、そして最も基本となるフォルムで既に体現されているからだ。

ある程度センスと技術が必要とはいえ、複雑な「足し算」が比較的容易なのに対し、根本的なフォルムの造形は、
あらゆるぜい肉をそぎ落とす「引き算」的な作業であり、圧倒的なセンスと高い技術力が求められる。

フェニアとGT96のように、複雑系の造形もシンプル系の造形もデザインとしては共に魅力的で、
そうであるがゆえに、これからも両極の方向性で高い完成度と個性が追究されていくのだろう。

私個人としては、結構昔から基本的にシンプル系のデザインに心惹かれている。
1990年代から気になっているけれど、未だにモデルカー化されていない車種(ロードカー)には、
ほとんど知られていない Helem V6Mega Monte Carlo などがある。

興味のある方は、調べてみて欲しい。

2016.03.29

ジュネーヴ・モーターショー

相変わらず、ウェブ原稿の筆が進まないまま、4月に突入しようとしている。

GWを過ぎれば、『世界モデルカー博物館』が開館1周年を迎えてしまう。

当初は、昨年秋ごろにはウェブを完成するつもりだったがそうはいかず、
年内には何とかなるだろうと思っていたが、サーバー障害でやる気を削がれた。

気を持ち直して、年末年始は格闘技番組と乃木坂46初出演の紅白歌合戦を観ながら、
難関だったアストン・マーティン・ヴァンテージとデ・トマソ・グアラの記事を仕上げた。

しかしその後、コルベットで筆が止まったままだ。

閑話休題、ジュネーヴ・モーター・ショー。
もちろん自分で行った訳ではないが、ネットから画像を拾って少々紹介。
今年は私好みの尖ったコンセプトカー等が目白押しだったようだ。

各車種の詳細は、追って専門誌などでご覧になっていただきたい。

私は、気に入った車のメディアキットを数々購入した(通販で)。
予想外の散財だが、久々の魅力的な車たちが百花繚乱なので、嬉しい限り。

2015.11.08

東京モーターショー2015

日本市場は、世界の自動車産業から舐められたもんだ。

上海や中東の“成り上がり金満国家”のモーターショーにはこぞって出展するが、
金持ちでも1台億単位のスーパースポーツにはお金を浪費しない、“アンチ道楽”の成熟紳士の国・日本には、
フェラーリ、ランボルギーニ、ブガッティ、アストンマーチン、ロータス、ベントレー、マクラーレン、ケーニグゼグはもちろん、
フォードやシボレーなどのアメ車でさえ出展しないという惨憺たる状況。市場として魅力が感じられないのだろう。

気持ちは分かるが、メーカーの姿勢として露骨かつ軽薄に思える。悔しい半分、日本人として情けない。
しかし、未だにマツダの初代デミオに乗っている私としては、批判できる立場に居ないので尚更つらい。

それでも、車離れが進んでいると言われながら、最終日のためか会場は沢山の来場者で賑わっていた。
それなりに充実しており、スーパーカー・ファンかつモデルカー・マニアの私から見て、特に面白かった車を紹介する次第。

YAMAHA Sports Ride Concept

今回のモーターショーで随一のコンパニオンとして目にとまった「藤木由貴」女史が受付嬢を務めていた。

電気自動車!! 現代版ISETTAこと piana と、Transformed Mobility ex machina CONCEPT

エンツォ・フェラーリ・デザイナー Ken Okuyama Kode9 & Kode7 Clubman

Radical RXC Turbo & Three Wheeler SLINGSHOT

Nissan Concept 2020 Vision Gran Turismo

Mazda RX-VISION ロータリー・スポーツ・コンセプト & ロードスター(おまけ)

ドイツ車たち (真新しくないので詳細は割愛)
 

Honda NSX

その他 もろもろ

ここで紹介しなかった車でも、やはり2ドア・クーペがカッコ良かった。車はカッコ良くなくては。
カッコ良くなかったら、単なる日常品の使い捨て「道具」に成り下がってしまう。

それと、車は軽量でなくてはECOではない。100kgの人間が1トンの車で移動するのは愚の骨頂。
電動パーソナル・コミューターも、軽くなくては意味が無い。

自動車文化の発展は、“売れ線”のSUV系へではなく、カッコ良い軽量コンパクト・カーへのシフトに見出すべきでは。
大出力化、大型化に知恵は要らない。1000ps欲しければターボを強力に利かせれば済むこと。偉くはない。
軽量化の中に新しい機能と利便性を盛り込み、カッコ良い乗り物に仕立てることにこそ、技術者の英知が求められる。

それともう一つ。何と言っても安くなくては。モデルカー・コレクターの私には、実車にお金を費やす資金的余裕が無い。
一部の金持ちか自動車マニアでしか、楽しくカッコ良い車に乗れないようでは、文化としての成熟は望めない。

今回、スーパーカー・ファンにしてモデルカー・マニアの私としては、海外のモーターショーも視野に入れねばと痛感。
フランクフルト・モーターショーに行ったのは既に20年ほど昔のこと、ロータス・エリーゼが初お披露目された年だった。

まあその前に、体重を30kgは落として(体力が要るから)、一眼デジカメを買ってからの話になる。
はてさて、いつになることやら。

Headmaster / 学院長

1965(昭和40)年生まれ射手座A型のスーパーカーブーム直撃世代。小学高学年でガンディーニ・デザインに魅了される。
時を経て1990年、ロンドン駐在時に英国製の1/43精密モデルカーに出会い収集を始める。1998年の帰国後は、国内の専門ショップに収集拠点を移し、現在に至る。
スーパーカーを主軸とするロードカー・2ドアクーペに車種を限定することで、未組立キットを含め約5000台を収集。
モデルカーの認知拡大、コレクターへの支援、業界の充実発展を願い、主力3700台を『世界モデルカー博物館』に展示。
同時に、展示作品の愉しみ方を解説する本サイト『モデルカー学』を開講。現在も「コレクター道」を実践・追究している。

―2015年5月現在―

2017年6月末に英国ロンドンへ再赴任し、現在ロンドンから欧州の様々な情報をブログとFacebookで配信中。

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